灌木くわんぼく)” の例文
そこまでさへ行けばあとはもう十町もずうっと丘の上で平らでしたし来るときは山鳥も何べんも飛び立ち灌木くわんぼくの赤や黄いろの実もあったのです。
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
黄昏たそがれと雪片に空氣は曇り、芝生の灌木くわんぼくさへ見えなくなつてゐた。私は窓掛を下して火の傍へ戻つた。
やつと灌木くわんぼくの高さしか無いひひらぎよ、僞善ぎぜんの尻を刺すのみ愛着あいぢやくきざたがね、鞭の手燭てしよく取手とつて
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
灌木くわんぼくの葉と枯葉とに埋め殘されて、空井戸の口は黒々と見えて居りますが、古い御影の井桁ゐげたが崩れたなりに殘つて居るので、さすがに怪我やあやまちで墜ち込む心配はありません。
未見みちの境を旅するといふ感じは、犇々ひし/\と私の胸に迫つて來た。空は低く曇つてゐた。目をさへぎる物もない曠野の處々には人家の屋根が見える。名も知らぬ灌木くわんぼくの叢生した箇處ところがある。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
密々たる灌木くわんぼく疎々そゝたる喬木けうぼくの混合林となりて、前者を代表するにはぎあり、後者には栗多く、それも大方は短木、この辺より不二は奈良の東大寺山門より大仏を仰ぐより近くそびえ、なかばより以上
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
そこには美しい灌木くわんぼくが二三本風に吹かれて立つてゐた。
林のすそ灌木くわんぼくの間を行ったり、岩片いはかけの小さく崩れる所を何べんも通ったりして、達二はもう原の入口に近くなりました。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
未見みちの境を旅するといふ感じは、犇々ひしひしと私の胸に迫つて来た。空は低く曇つてゐた。目を遮ぎる物もない曠野の処々には人家の屋根が見える。名も知らぬ灌木くわんぼくの叢生した箇処ところがある。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
葉の落ちた灌木くわんぼくの林の中をぶら/\歩いたが、晝食後(リード夫人は、客のない時は、はやく晝食をませた)は、つめたい冬の風が、陰鬱な雲と、身にしみるやうな雨をもたらしたので
やつと灌木くわんぼくの高さしか無いひひらぎよ、ちいさい※手くびきり、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
その前に白い煙がパッと立つた——獵犬だ。蘆荻の中から鴫らしい鳥が二羽、横さまに飛んで行くのが見えた。其向ふには、灌木くわんぼくの林の前に茫然と立つて汽車を眺めてゐる農夫があつた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
大きくて、淺黒くて、快活で、カァセイジの貴婦人が持つてゐたに相違ないやうな髮を持つてゐる——おや! デントとリンとが厩にゐる! あの小門を通つて灌木くわんぼくの林を拔けて行きなさい。