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さびし
「あれ! お聞き、」と
涙声で、枕も
上らぬ寝床の上の露草の、がッくりとして
仰向けの
淋い素顔に
紅を含んだ、白い頬に、
蒼みのさした、うつくしい、妹の、ばさばさした
天神髷の崩れたのに
冠りて馬に
乘つゝ是々
馬士どの今夜は何だか
淋い樣だ
何日は
最う
寅刻頃には
徐々人の
往來も有のに鮫洲から
爰迄來中に一人も逢ぬ
扨々淋しいことだぜ
馬士アイサ此節は人通りが
少無なつて否はや一
向に
不景氣なことさ品川歸りも通らねえ
隨分氣を
「あれ! お
聞き、」と
涙聲で、
枕も
上らぬ
寢床の
上の
露草の、がツくりとして
仰向けの
淋い
素顏に
紅を
含んだ、
白い
頬に、
蒼みのさした、うつくしい、
妹の、ばさ/\した
天神髷の
崩れたのに