さびし)” の例文
「あれ! お聞き、」と涙声なみだごえで、枕もあがらぬ寝床の上の露草の、がッくりとして仰向あおむけのさびしい素顔にべにを含んだ、白い頬に、あおみのさした、うつくしい、妹の、ばさばさした天神髷てんじんまげの崩れたのに
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かぶりて馬にのりつゝ是々馬士まごどの今夜は何だかさびしい樣だ何日いつも寅刻頃なゝつごろには徐々そろ/\人の往來ゆきゝも有のに鮫洲から爰迄こゝまで來中くるうちに一人も逢ぬ扨々さて/\さびしいことだぜ馬士まごアイサ此節は人通りが少無すくなくなつて否はや一かう不景氣ふけいきなことさ品川歸りも通らねえ隨分ずゐぶん氣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あれ! おき、」と涙聲なみだごゑで、まくらあがらぬ寢床ねどこうへ露草つゆくさの、がツくりとして仰向あをむけのさびし素顏すがほべにふくんだ、しろほゝに、あをみのさした、うつくしい、いもうとの、ばさ/\した天神髷てんじんまげくづれたのに
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)