うは)” の例文
由三は何か此う別天地の空氣にでも觸れたやうな感じがして、ちよつと氣がうはついた。またウソ/\と引返して電車みちに出る。ヤンワリと風が吹出した。埃が輕く立つ。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
※ヤアル氏は若手の中の流行子はやりつこで一作ごとに技巧の変化を見せ過ぎる嫌ひはあるが、うは調子で無く
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
然しジツと物の色に滲入しみいる光では無く、軽く物の表にうはついて動く光である。向うから高下駄を穿いて、雨傘をさした職工らしい男が来る。番傘がキラ/\と目にきらめいた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
いくらかうはつ調子に口の軽くなつた小谷にひきかへ、今夜の練吉は何となく元気がなかつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
無理解の周圍の中に生活する事は、吾々にとつて最も悲しい事であるが、「鳥のなげき」のうはついた氣障きざないひあらはしは、その悲しみを賣物にしてゐるやうな推察を起させる。
俺の生活は下らない感覚の顫動の為に攪乱かうらんされるやうな、そんなうはついたものではない。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
それに表がうは々してゐて、松竹館の方へママ持させてみたり、新宿をあけたりするから自然とダレたものが出来て来るのだ。何とかしなくちゃーと思ふ。ひる済んで、大阪屋のランチとポタアジュ。
うはつきし声のかすれを思ひいで
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
氣が妙にうはついて來て、フワ/\と宙でも歩いてゐるかの心地ここち。で車の響、人の顔、日光に反射する軒燈の硝子のきらめき、眼前にチラ/\する物の影物の音が都て自分とは遠くへだツてゐるかと思はれる。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)