)” の例文
孫はそれを見てもし自分が鸚鵡になることができたなら、飛んで女の室へ往けるのだと思った。そして心をそれにめていた。
阿宝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
イエスは富める真面目な青年にいつくしみの目をそそぎ給うたごとく、これらの貧しき素朴なる青年弟子にも愛しみの目をめて
何か探そうとして机の抽斗ひきだしを開け、うちれてあッた年頃五十の上をゆく白髪たる老婦の写真にフト眼をめて、我にもなく熟々つらつらながめ入ッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
けれどまず第一に人の眼にまるのは夜目にも鮮明あざやかに若やいで見える一人で、言わずと知れた妙齢としごろ処女おとめ
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
お勢は紳士にも貴婦人にも眼をめぬ代り、束髪の令嬢を穴の開く程目守みつめて一心不乱、傍目わきめを触らなかった、呼吸いきをもかなかッた、母親が物を言懸けても返答もしなかった。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
お政は菊細工にははなはだ冷淡なもので、唯「綺麗だことネー」ト云ッてツラリと見亘みわたすのみ。さして眼をめる様子もないが、その代りお勢と同年配頃の娘に逢えば、叮嚀ていねいにその顔貌風姿かおかたち研窮けんきゅうする。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)