泣声なきごゑ)” の例文
旧字:泣聲
断念あきらめてりましたところが(泣声なきごゑ鉄瓶点てつびんだてゞ一ぷくくださるとは……往昔むかし友誼よしみをお忘れなく御親切ごしんせつに……わたくしう死んでもうございます。
すでにして、松川がねやに到れば、こはそもいかに泣声なきごゑまさ此室このまうちよりす、予ははひるにもはひられず愕然がくぜんとしてふすまの外にわななきながら突立つツたてり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
好きでない気質の交つた子だと、鏡子は昔からの感情のあらたまがたい事も健に思つたのであつた。隣の間で榮子の泣声なきごゑがする。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
るからに執念の留まれるゆゑにや、常にはせるくわい無きも、後住こうぢうなる旗野の家に吉事きつじあるごとに、啾々しう/\たる婦人をんな泣声なきごゑ、不開室の内に聞えて、不祥ふしやうある時は、さも心地好こゝちよげに笑ひしとかや。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)