法度はつと)” の例文
うるすべなど知らざる上にみやこは知らず在方ざいかたでは身の賣買うりかひ法度はつとにて誰にたのまん樣もなく當惑たうわくなして居たりしが十兵衞はたひざ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
而して時の政府に建言し、枝一本腕一本といふきびしい法度はつとを設けて苗木を愛護し、数代の苦心によつて現在の壮大な松原が出来上つたものださうだ。
沼津千本松原 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
それが文禄年間になると、「きかぬものたばこの法度はつと銭法度ぜにはつと、玉のみこゑにげんたくの医者」と云ふ落首らくしゆが出来た程、一般に喫煙が流行するやうになつた。——
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鶴子の子供らしい親しみが加納の家に「法度はつと」だといふのではなく、和作といふ人間に対する評価からすべての現象の生じたことを、今更はつきりとみ込んだのである。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
そのうち切支丹が法度はつとになつて、信徒は皆火炙ひあぶりにせられた。大膳もその数には漏れなかつた。
まめがなけねばこのみち法度はつと
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
牢内らうないより出入の節とが人のそば親戚みよりよする事は法度はつとなれど江戸とちがひ村方の人足のみにて知りあひの百姓ども故知らぬ顏にて煙草たばこくゆらし居たりしとぞ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
昔或る僧侶が幕府に獻言し、枝一本腕一本とかいふ嚴しい法度はつとを作り、この松原を育てゝその蔭の田畑の潮煙から蒙むる損害を防いだものであるさうだ。
慶安太平記の由井正雪が大望たいまうを企てた時、その一味徒党には浪人ものが多かつた。これは当時の法度はつととして養子といふものを禁じた結果として、甚六でない二男三男四男五男……が有り余つた。
ちく一に白状はくじやうにはおよびされば殺害せしと思ふ當人を取逃とりにがし殊に御法度はつと一人旅ひとりたびとめ落度おちどの申譯立ちがたく罪は徳右衞門一人にし長き牢舍らうしやのうちあはれむべしかれ牢死ろうし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)