樽屋たるや)” の例文
樽屋たるや桶屋おけやの商売が我邦わがくににはじまったのは、はっきり何時いつからということはできないが、ともかくもそう古いころのことでないらしい。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鍛冶屋かじや、仕立屋、水車小屋、せんべや、樽屋たるや。それから自転車屋など。それらはなんというすばらしい見物みものだったことだろう。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
竈河岸へっついがし、浜町、それで田辺の家の方では樽屋たるやのおばさんや大川端の兄を呼んでいた。それを捨吉は涼子に応用した。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、樽屋たるや三右衛門は、父として嫁入り近い彼女の沈んでいることが、気懸りでもあり、不足でもあった。
下頭橋由来 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど樽屋たるやの運搬車のようなもので、二つの車輪の上に長い梯子はしごを渡してその前端をながえにしたものだった。各馬車には、というよりむしろ各梯子には、相接した四頭の馬がつけられていた。
「こいつのイ、樽屋たるやせいさの子供だけどのイ、下駄を一足やっとくれや。あとから、おっ母さんがぜにもってくるげなで」
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
廊下の暖簾のれんの間から舞台の方の幕の動くのも見える。樽屋たるやのおばさんの娘をそういう暖簾のかげに見つけるのは丁度汐水しおみずの中に海の魚を置くほど似合わしくもある。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
樽屋たるやの家族は、お次の婚礼が近いので南縁にものをひろげていたが
下頭橋由来 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
樽屋たるやの文六ちゃんの家は、みんなの家とは少しはなれたところにありました。ひろい、蜜柑畑みかんばたけになっている屋敷にかこわれて、一軒きり、谷地やちにぽつんと立っていました。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
就中わけても、まだ小娘のように思われていた人達が遽かに姉さんらしく成って来たには驚かされる。そういう人達の中には大伝馬町おおてんまちょうの大勝の娘、それから竈河岸へっついがし樽屋たるやの娘なぞを数えることが出来る。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
樽屋たるや木之助きのすけじいさんのはなしでは、このかねをつくった鐘師かねしがひどいぜんそくちで、しょっちゅうのどをごろごろいわせていたので、それがかねにもうつって、このかねたたくと、ごオんのあとに
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
就中わけても、まだ小娘のように思われていた人達が遽かに姉さんらしく成って来たには驚かされる。そういう人達の中には、大伝馬町おおてんまちょう大勝だいかつの娘、それからへ竃河岸へっついがし樽屋たるやの娘なぞを数えることが出来る。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、樽屋たるや木之助きのすけじいさんと、ほか二、三にん老人ろうじんがあいづちをうった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
樽屋たるや次郎じろうさんがつかつかとはいってきて
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)