しる)” の例文
厨神大黒天もなかなか武備も抜かっておらぬというしるしに槌を持たせたのが、後には財宝を打ち出す槌とのみ心得らるるに及んだと見える。
海道を東のほうへはいり、むかし鎌倉道だったと伝えられる草がくれの細径ほそみち辿たどってゆくと、牛田村うしだむらという処の松原はずれにこけむしたしるしの石が立っていた。
日本婦道記:墨丸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
多分に施行も出しました事でございまして、の砕けた皿を後世のためにと云うので、皿山の麓方ねがたのこんもりとした小高き処へうずめて、しるしを建て、これを小皿山こざらやまと名づけました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三十間堀さんじつけんぼりに出でて、二町ばかり来たるかどを西に折れて、有る露地口に清らなる門構かどがまへして、光沢消硝子つやけしガラス軒燈籠のきとうろうに鳥としるしたるかたに、人目にはさぞわけあるらしう二人は連立ちて入りぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
酋長抔の位階のしるしとして用ゐられしなるべしと思惟しゐするのみ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
と、しるした石があった。伊織はその辺から崖の中へまぎれ込んだ。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
サウシの書(前出)に若いポルトガル人が群狼に襲われ樹上に登って害を免がれ後日の記念にその樹を伐り倒し株ばかり残して謝意をしるした。
さて父がその樹の根本から初めて胸の高さの処まで刻み目を付ける、これと同時に賦魂の神カリ自身りて坐せる木に刻み目を付けて新たに一人地上に生出せるをしるすとぞ。