槍先やりさき)” の例文
とおどろいたせつなに、小文治こぶんじの馬も屏風びょうぶだおれにぶったおれた。朱柄あかえ槍先やりさきをつかんでいた呂宋兵衛も、それにつれてからだをかした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかる処へ、奥方連おくがたづれのお乗込みは、これは学問修業より、槍先やりさきの功名、ととなえてい、とこう云うてな。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
直刀ちよくたうが二ほん交叉かうさしてある。鐵環てつくわんくつわ槍先やりさき祝部いはひべ土器等どきとうが、其所此所そここゝかれてある。
葉子はいらいらしながらもそれを顔には見せないで今度は愛子のほうに槍先やりさきを向けた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ひそかに近侍の者にためいきをらしたと云うから、槍先やりさきの功名のみならず、智謀胆略の尋常でないことが、此の時すでに一閑斎の眼にとまって警戒されるようになったのであろう。
槍先やりさき功名こうみやうよつ長年ながねん大禄たいろく頂戴ちやうだいしてつたが、これから追々おひ/\なかひらけてるにしたがつて時勢じせい段々だん/\変化へんくわしてまゐるから、なにに一のうそなへたいと考へて、人知ひとしれず医学いがくを研究したよ。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
伊那丸の身は、その槍先やりさき田楽刺でんがくざしと思われたが、さッとかわしたせつな、槍は伊那丸の胸をかすって流るること四、五尺。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いけねえ! と思ったので呂宋兵衛、いきなり障子しょうじけるやいな、バラッと飛びだすと、待ちかまえていた長身ながみ槍先やりさき
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)