楽土らくど)” の例文
旧字:樂土
けれど、黄巾党が跋扈ばっこすればするほど、楽土らくどはおろか、一日の安穏あんのんも土民の中にはなかった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夕日ゆうひは、かさなりった、たかやまのかなたにしずんだのであります。さんらんとして、百みだれている、そして、いつも平和へいわ楽土らくどが、そこにはあるもののごとくおもわれました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、世間の思っているように岩山ばかりだったわけではない。実は椰子やしそびえたり、極楽鳥ごくらくちょうさえずったりする、美しい天然てんねん楽土らくどだった。こういう楽土にせいけた鬼は勿論平和を愛していた。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
虫の中でも人間に評判のよくないものの随一ずいいちうじである。「蛆虫めら」というのは最高度の軽侮けいぶを意味するエピセットである。これはかれらが腐肉ふにく糞堆ふんたいをその定住の楽土らくどとしているからであろう。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
中国の探題たんだい羽柴筑前守と一介の茶弟子於福おふくとは、おのずから奉じゆく道はちがうが、世に楽土らくどて、人に益し、あわせて自分一箇も人間らしゅう達成してゆこうとする志に変りはない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)