枝葉しよう)” の例文
どこでと、突っ込んで場所を訊かれては困りそうな顔つきであったが、城太郎の質問は、そういう枝葉しようには触れず
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
負えるあり、いだけるあり、児孫じそんを愛するが如し。松のみどりこまやかに、枝葉しよう汐風しおかぜに吹きたわめて、屈曲おのずからためたる如し。そのけしき窅然ようぜんとして美人のかんばせよそおう。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
すべてを知ろうとして実は何一つ理解しなかった。そして一冊も読み終らず、読書最中に、枝葉しようの事柄や果しない空想に迷い込んでは、深い倦怠と悲哀とを心に残された。
まず人倫の大道だいどうである親と子のあいだに堅い結びつきのない社会は、その大道をもととしなくてはならない枝葉しようの道の、どうしてとどこおりなく通ってゆくことができましょう。
親子の愛の完成 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
かかるときにおいてはじめて芸術は人類に必需ひつじゅで、自他じた共に恵沢けいたくを与えられる仁術じんじゅつとなる。一時の人気や枝葉しようの美に戸惑とまどってはいけない。いっそやるなら、ここまで踏みることです。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
蝦蟆がますなわち牛矣うしきのこすなわち其人也そのひとなり古釣瓶ふるつるべには、そのえんじゅ枝葉しようをしたゝり、みきを絞り、根にそそいで、大樹たいじゅ津液しずくが、づたふ雨の如く、片濁かたにごりしつつなかば澄んで、ひた/\とたたへて居た。あぶらすなわちこれであつた。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なお金森かなもりに充分の枝葉しようを茂らせ、國綱に一層のとぎを掛け、一節切に露取つゆとりをさえ添え、是に加うるに俳優澤村曙山さわむらしょざんが逸事をもってし、題して花菖蒲はなしょうぶ沢の紫と号せしに、この紫やあけより先の世の評判を奪い
よく使いにられた者が、戻って来てその任務の返辞をするのに、あれこれと、途中のことやら枝葉しようの問題ばかり長々といっていて、かんじんな使命の結果は、調ととのったとも調わないとも
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)