果報かほう)” の例文
今生こんじょうの 果報かほうえて 後生たすけさせたもうべく候 こんじょうの果報をば 直義にたばせ候て 直義を安穏あんのんに まもらせ給い候べく候
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「されば、恵心えしん御房ごぼうも、念仏読経四威儀しいぎを破る事なかれと仰せられた。翁の果報かほうは、やがて御房の堕獄だごくの悪趣と思召され、向後こうごは……」
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
嗚呼ああ、先生なんぞ予をあいするの深くしてせつなるや。予何の果報かほうありて、かかる先生の厚遇こうぐうかたじけのうして老境ろうきょうなぐさめたりや。
すだのって、茲辺ここいらにまごまご出来て宜いじゃねえか、そのうちにあ、吉さん(下男の名)が野良から帰って足洗いに来るものなあ、それ、お前果報かほうだんべい
かやの生立 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
両親の喜び一方ひとかたならず、東京にて日を暮し得るとは何たる果報かほうの身の上ぞや、これも全く英子ひでこが朝鮮事件にあずかりたる余光なりとて、進まぬ兄上を因循いんじゅんなりと叱りつつ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
その華族令嬢が、何を物好きに貧乏小説家などを恋したのか、恐らく彼女の探偵小説好きがきっかけとなったのであろうが、これを知る者、誰一人蘭堂の果報かほううらやまぬ者はなかった。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「コレコレ、お奉行様がお会いになるという。果報かほうなやつだ。こっちへ来い」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「お身の出世は蔭ながら聞いている。果報かほうめでたいことじゃ」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おりたぼうらりぬ果報かほう
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すでに、鎌倉を立ち、九州このかたも、直義へは、軍政、日常のおもなるけん、あらましは彼にゆだねてあるが、このうえの名誉も栄花も俗世の果報かほうはみんな彼にやりましょう。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
棚から牡丹餅に転げ込んで来たこぼ果報かほう
「エエ、口がらねえ。だが、弦之丞という奴は、どこまで女に果報かほうのある奴だろう」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくさよ、早く終結を告げよ。あとの果報かほうは、すべて直義へ与えようぞと、一そう思った。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)