昭々しょうしょう)” の例文
昼すら真夜まよに等しい、御帳台みちょうだいのあたりにも、尊いみ声は、昭々しょうしょうたまを揺る如く響いた。物わきまえもない筈の、八歳の童女が感泣した。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
天下の府、枢廟すうびょうへいや今きわまる。よろしく公明の旌旗せいきを林集し、正大の雲会を遂げ、もって、昭々しょうしょう日月の下に万代の革政を諸公と共に正さん。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みちに落ちたあかい木の葉も動かない、月は皎々こうこう昭々しょうしょうとして、磯際の巌も一つ一つ紫水晶のように見えて山際の雑樹ぞうきが青い、穿いた下駄の古鼻緒も霜を置くかと白く冴えた。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
併しながら仇討ちの話にしても、滑稽な話にしても、どんな話をとって来ても、そこには昭々しょうしょうたる伝統があった。伝統に準じて話が出来て居った。そこには矢張り祖先の訓戒があった。
現下に於ける童話の使命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これを要するにその運動は直接にも間接にもただ国家の権力を増長して一個人を呑滅するにあるは昭々しょうしょうとして火を見るがごとく、帝国の権力は駸々乎しんしんことして蚕虫さんちゅう桑葉そうようを食うがごとく
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
蜥蜴のカタミは何も無い。日は相変らず昭々しょうしょうと照らして居る。地球は平気ではしって居る。木の葉一つソヨがぬ。トラは蜥蜴を食ってしまって、世にも無邪気むじゃきな顔をして、眼を閉じて眠って了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さきには左中将の顕職けんしょくをさずけられ、親衛の大任、禁軍のせい、あわせて昭々しょうしょうたる錦旗をも給うていながら、征途のかどでに瘧病ぎゃくびょうをわずろうて、以後もはかばかしくなく
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分では何の症状も覚えず、つねにゆがめられざる正気せいき昭々しょうしょうまなこをもって、世をること、国を思うこと、忘れぬつもりではいても……。さて、傍目はためには如何いかがなものやら
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしながら、綸旨りんじを拝して、将卒共に、勇気百倍いたしました。きっと一日も早くせ上りまする。そして天下の逆賊をはらい、君辺くんぺんの害を清めて、昭々しょうしょう御代みよを恢復せずにはおきません。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もって、日本の正しいすがたを、昭々しょうしょうと千古にのこし伝え、後々のちのち億兆おくちょうの臣民が、世々よよの文化の推移にも、国系国体の大本たいほんに惑ったり見失ったりすることのないような、史林しりんの源泉をつくっておく。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)