旧家きゅうか)” の例文
旧字:舊家
それで本家とか旧家きゅうかとかいうような、もっとも念入りの葺きかたをしていた家から、最初にこれをやめて瓦屋かわらやになろうとしている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
雪子の細胞には、他人のさういふ仕打ちの底の心理を察してうらやむだけの旧家きゅうか育ちの人間によくある、加虐性も被虐性も織り込まれてゐた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
それは鎌倉かまくら旧家きゅうかおこりました事件ことで、主人あるじ夫婦ふうふようやく五十になるか、ならぬくらい年輩ねんぱい、そして二人ふたりあいだにたった一人ひとりむすめがありました。
また林太郎の家も何十代つづいたかわからないという旧家きゅうかで、村の一番北のはずれに、霞ガ浦を見下して、大きなわら屋根をかぶっていました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「それがどうも分らないんだ。牛丸君の家は旧家きゅうかだから、金がうんとあると思われたのかもしれないな。そんなら、あとになって、きっと脅迫状きょうはくじょうがくるよ」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大伯父が純宗教家でそう華々しい生活もして居なかったけれ共旧家きゅうかだもんで今東京で相当に暮して居る。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
加部かべ小ツルがチリリンヤ(こしにリンをつけて、用足しをする便利屋べんりや)のむすめであり、木下富士子きのしたふじこ旧家きゅうかの子どもであり、ヘイと返事をした香川かがわマスノが町の料理屋の娘であり
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
昔から代々うち続いた旧家きゅうかが軒をならべた、静かな一角でございまして、ご商売屋さんと申しますれば、三河屋みかわやさんとか、駒屋こまやさん、さては、井筒屋いづつやさんというような、表看板はごく、ひっそりと
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
土着どちゃく旧家きゅうからしい土塀どべい樹木じゅもくが、母屋おもやを深くつつんでいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一七 旧家きゅうかにはザシキワラシという神の住みたもう家少なからず。この神は多くは十二三ばかりの童児なり。おりおり人に姿を見することあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
富んでゐる無職業しもたや旧家きゅうかであることだけは判つたが、内部の家族の生活振りや程度のことなど、子供の方から、てんで知りい慾望もなかつたのである。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
昔の面影が残って居る様で、若し幸運ばかり続いて昔の旧家きゅうかがそのまま越後でしっかりして居たら、今頃私なんかに「お婆さんお婆さん」と呼ばれたり、僅かばかりの恵に
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)