かたは)” の例文
それゆゑ道夫は儒たらむことを志して、同藩の佐藤一斎に師事し、かたはら林述斎の講筵に列した。既にして一斎は幕府に召され、高足若山勿堂ふつだうが藩文学の後をいだ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
書肆はかたはら立派な果物罐詰類の店を出してゐる、進歩思想の商人である。此二人がプラトンに種々いろ/\の葡萄酒や焼酎を勧めて、プラトンは応接にいとまあらずと云ふ工合である。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
其に今一つ、万葉集が奈良朝のものだと定めたい考へが、既に古くからあつた筈だから、かたはらかうした解釈がついたものと思はれる。仮名序に照して見ると、十代以前といふのは合はなくなる。
万葉集のなり立ち (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
あり別れを惜みて伏水ふしみに至る。兵士めぐつて之をる。南洲輿中より之を招き、其背をつて曰ふ、好在たつしやなれと、金を懷中くわいちゆうより出して之に與へ、かたはら人なき若し。兵士はなはだ其の情をかくさざるに服す。
すなはその(四九)歩軍ほぐんて、その(五〇)輕鋭けいえいと、(五一)ばいかうあはせてこれへり。孫子そんし其行そのかうはかるに、くれまさ馬陵ばりよういたるべし。馬陵ばりようみちせまくしてかたは(五二)阻隘そあいおほく、へいふくし。
これで稽古には取り掛かることが出来た。一同毎日丸山の伊沢の家に集つて熱心に稽古をした。そしてかたはら小野の家に舞台を急造し、小道具、衣裳などを借り出すことに尽力した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)