“斯(ここ)” の例文
子路慍(いか)り、見えて曰く、君子も亦窮する有るかと。子曰く、君子固より窮す。小人窮すれば斯(ここ)に濫(らん)すと。——衞霊公篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
親(しん)を洽(あまね)くし衆を和するも、恒(つね)に斯(ここ)に於(おい)てし、禍(わざわい)を造り敗(はい)をおこすも、恒(つね)に斯(ここ)に於てす、其悪(あく)に懲り、以て善に趨(はし)り、其儀を慎(つつし)むを尚(たっと)ぶ、といえり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
厳冬永く留(とどま)り、春気至らず、躯殻(くかく)生くるも精魂は死するが如きは、生くると雖(いえど)も人の生くべき道は失われたるなり。文章無用の用は其(そ)れ斯(ここ)に在らん乎(か)。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
友人山崎久卿モマタ斯(ここ)ニ見ルトコロアリ博ク江戸ノ詩ヲ採リ、命ジテ『江都名家詩選』トイフ。来ツテ余ガ冕言(べんげん)ヲ徴ス。余展(の)ベテコレヲ観ルニ一集ノ中、各体具備シ光彩爛然(らんぜん)トシテ殆(ほとんど)遺珠ナシ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それこそ古語に謂ゆる『之を立つれば斯(ここ)に立ち、之を道(みちび)けば斯に行(したが)い、之を綏(やす)んずれば斯に来り、之を動かせば斯に和らぐ。其の生や栄え、その死や哀む』
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)