斑犬ぶちいぬ)” の例文
「そうよ、其奴を、だん踏潰ふみつぶして怒ってると、そら、おいら追掛おっかけやがる斑犬ぶちいぬが、ぱくぱくくいやがった、おかしかったい、それが昨日さ。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで木樵きこりはすぐ白犬と斑犬ぶちいぬとを、両方のわきにかかえたまま、黒犬の背中に跨って、大きな声でこう云いつけました。
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
イワン・フョードロヸッチはひどく夢中になつて、さうしたものに見惚れてゐたが、馭者台から降りたばかりの猶太人のふくらはぎ斑犬ぶちいぬが噛みついた時、はじめて我れに返つた。
おかしいなと思って、他の犬を調べて見たが、一匹だけ、ホラ、茶のぶちのお寺の犬の脚の裏にベットリと同じインキがついているんだ。白い犬と斑犬ぶちいぬは親友らしく、いつも一緒にふざけているらしい。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
荒物屋あらものや軒下のきした薄暗うすくらい処に、斑犬ぶちいぬが一頭、うしろむきに、長く伸びて寝て居たばかり、事なく着いたのは由井ヶ浜である。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「噛め。噛め。洞穴の入口に立っている土蜘蛛を噛み殺せ。」と、斑犬ぶちいぬの背中をたたいて、云いつけました。
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「これは」森君は茶の斑犬ぶちいぬを指した。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
荒物屋あらものや軒下のきした薄暗うすくらところに、斑犬ぶちいぬが一とう、うしろむきに、ながびてたばかり、ことなくいたのは由井ゆゐはまである。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「高の知れた食蜃人なぞを、何でこのわたくしこわがりましょう。その証拠には、今ここで、わけなく私が退治して御覧に入れます。」と云いながら、斑犬ぶちいぬの背中を一つたたいて
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
檐下のきしたに、白と茶の大きな斑犬ぶちいぬ一頭ひとつ、ぐたりと寝ていました。——あの大坊主と道づれでしたが。……彼奴あいつ、あの調子だから、遠慮なしに店口で喚いて、寝惚声ねぼけごえをした女に方角をききましたっけ。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)