数万すまん)” の例文
旧字:數萬
倶利伽羅を仰ぐと早や、名だたる古戦場の面影が眉に迫って、驚破すわ、松風も鯨波ときの声、山の緑も草摺くさずりを揺り揃えたる数万すまん軍兵ぐんぴょう
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少々は良心に恥ずる所あるとも数万すまんの後進を益することと思えば意を曲げ膝を屈し以て莫大の資金を募り得しにあらずや
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
有志といえる偽豪傑連にせごうけつれんよりは、酒色しゅしょくを以ていざなわれ、その高利の借金に対する証人または連借人れんしゃくにんたる事を承諾せしめられ、はて数万すまんの借財をいて両親に譴責けんせきせられ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
叱咜する度土石を飛ばして丑の刻より寅の刻、卯となり辰となるまでもちつとも止まず励ましたつれば、数万すまん眷属けんぞく勇みをなし、水を渡るは波を蹴かへし、をかを走るは沙を蹴かへし
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
口々に数万すまんの見物は愕いたが、やがて真相が知れ渡ると
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
されば重井もその職業とする弁護事務の好成績を積み、その内大事件の勝訴となりて数万すまんきんを得ん時、彼に贈りて一生を安からしめ、さて後に縁を絶たんといえり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
西は近江おうみ、北は加賀、かすか美濃みのの山々峰々、数万すまん松明たいまつつらねたようにひでりほのおで取巻いた。夜叉やしゃヶ池へも映るらしい。ちょうどその水の上あたり、宵の明星の色さえ赤い。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
となりたつとなるまでもちっとも止まず励ましたつれば、数万すまん眷属けんぞく勇みをなし、水を渡るは波を蹴かえし、おかを走るはすなを蹴かえし、天地を塵埃ほこりに黄ばまして日の光をもほとほとおお
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのたび両国橋上では、数万すまんの人声が喚き立てた。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
目下弁護事務にてすこぶる有望の事件を担当し居り、この事件にして成就じやうじゆせば、数万すまん報酬はうしうを得んこと容易なれば、其上そのうへにてすべて花々しく処断すべし、何卒なにとぞ暫しの苦悶を忍びて
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
表裏異心のともがらの奸計かんけいに陥入り、にわかに寄する数万すまんの敵、味方は総州征伐のためのみの出先の小勢、ほかに援兵無ければ、先ず公方をば筒井へ落しまいらせ、十三歳の若君尚慶ひさよし殿ともあるものを
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼は妾と同棲せるがために数万すまんの財を棄つること、あたかも敝履へいりの如くなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)