搾木しめぎ)” の例文
けれども自分の靈魂なるものは自分にとつて解くことの出來ない謎であつた。自分はその謎の吾が心を搾木しめぎに掛ける苦痛に堪へなかつた。
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
その苦しさは肉躰にくたい的なもので、まず嘔きけがこり、ついで胸を搾木しめぎにかけられるか、ひき裂かれでもするような気持になる。
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、かの女らの眼は冷く、美しく、剥製された動物らのそれと、その無感覚を全く等しくしてゐた。私は心臓が搾木しめぎにかけられたやうに感じた。
鳥獣剥製所:一報告書 (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
体中からだじゅう、もうそれは搾木しめぎにかけられたようにぎりぎりいたんで、つこともすわることもできません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と云う口許くちもとこそふくらなりけれ。主税のせなは、搾木しめぎにかけて細ったのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何が故であるか、そのおそい時刻はさっきのかの女をおそうた幻影の内にもう一度かの女を引き摺り込むのであった。かの女は搾木しめぎにかけられたように硬ばって、しきりにその聴覚をかたむけはじめた。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
柱時鐘はしらどけい見詰みつむれば、はりのコムパス、搾木しめぎ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
油屋の黄なる搾木しめぎをきくときは
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
こう思うあとから事実はますますたしかに、いよいよ動かし難くなるばかりだった。それはおせんを搾木しめぎにかけ、火にのせてあぶるのに似ていた。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
柱時鐘はしらどけい見詰みつむれば、はりのコムパス、搾木しめぎ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
殆んど声にはならなかったが、まるで搾木しめぎにでもかけられたような、呻きかたであった。
ひとでなし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
なにしろおめえ一と晩も欠かさず五度ずつ神輿みこしのお渡りだてんだ、まるで搾木しめぎに掛けて種油をしぼるみてえに、うむを云わさねえてんだから、そしてちっとでもいやなそぶりをすると
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
搾木しめぎにかけられるように胸苦しく、絶えず一種の呼吸困難におそわれた。
四年間 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)