あぐ)” の例文
旧字:
遊覧せんとありしには似で、貴婦人の目をあぐれども何処いづこを眺むるにもあらず、うつむき勝に物思はしき風情ふぜいなるを、静緒は怪くも気遣きづかはしくて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かの電報のごとき簡易の文、約略の語、なおよく通ず、いわんや文章、談話をや。かつ英語も一語数訓のものあり。ここにその例をあぐる。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
あぐる事になるかもしれんが、筆の孝心より申すのじゃ仔細はない、控えて居れ、ふむ、主家の妾の腹に宿した子が有ったと
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
にはかに人の騒立つるにおどろきて顔をあぐれば、座中ことごとくびを延べておのかたを眺め、声々に臭しとよばはるに、見れば、吾が羽織のはしは火中に落ちて黒煙くろけふりを起つるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
生きたる心地もせずして宮のをののけるかたはらに、車夫は見苦みぐるしからぬ一台の辻車つじぐるまを伴ひきたれり。やうやおもてあぐれば、いつ又寄りしとも知らぬ人立ひとたちを、可忌いまはしくも巡査の怪みてちかづくなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)