押退おしの)” の例文
モン長 おゝ、おのれ不所存者ふしょぞんものめが! ちゝ押退おしのけてさきはかはひらうとは、なんといふ作法知さはふしらずぢゃ、おのれ
きつぱり跳ねつけるやうにきつく手をふつたが、それでもこの船がこの儘天国の港に船がかりするのだつたら、老人は皆を押退おしのけて、誰よりも先に埠頭はとばの土を踏んだに相違なかつた。
痩法師やせほうしが杖にすがって、珠数までみながら、ずッと寄ると——ついと退く。……端折はしょった白脛しらはぎを、卯の花に、はらはらと消し、真白まっしろい手を、って押退おしのけるようにしたのです。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
永遠性を誓えない邪恋を押退おしのけ純一無二のものでなければならないと、いやしむべき肉の恋をこばんで、苦しむ身に投げつける言葉のそれは、まだ忍耐がまんするとしても、名ばかりの夫妻とはいえ
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
と額に太い青筋を出して、お島を押退おしのけながら
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とお百合を抱くようにして三人鐘楼しょうろう駈上かけあがる。学円は奥に、上り口に晃、お百合、と互にたてにならんと争う。やがて押退おしのけて、晃、すっくと立ち、鎌をかざす。博徒、衆ともに下より取巻く。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「もう私……気味が悪いの、可厭いやだなぞって、そんな押退おしのけるようなこと言えませんわ。あんまり可哀想な方ですもの。それはね、あの、うぐい(鯎)亭——ずッと河上の、川魚料理……ご存じでしょう。」
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)