しごき)” の例文
寝衣ねまきか何か、あわせ白地しろじ浴衣ゆかたかさねたのを着て、しごきをグルグル巻にし、上に不断の羽織をはおっている秩序しどけない姿もなまめかしくて、此人には調和うつりい。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
鹿の子の見覚えあるしごき一ツ、背後うしろ縮緬ちりめんの羽織を引振ひっぷるって脱いでな、つまを取ってながしへ出て、その薬鑵の湯をちまけると、むっとこう霧のように湯気が立ったい
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
清さんが朝倉の帰に寄らざりしを思ひ合せて、ふさぎながら湯にきたるに、聞けば胸のみ騒がるるお万があのことば端々はしばし、兼吉さんがしごきばかりで廊下に出たのを見たとはまこと
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おくみは寝間着を着換へて、赤いしごきを結ぶと、昼の帯を畳んで置いて蚊帳に這入つた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
帯の下に下〆したじめと、なほ腰帯といふものあり。また帯上おびあげと帯留とおまけにしごきといふものあり。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だがしわになるといけないからこの浴衣ゆかただけはお着なさいよ、私も着かへるからとしごきばかりになれば、清二郎は羽織はおりを脱ぎながら私やあ急いで来たせゐか、先刻さっきからのどが乾いてなりませぬ
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)