打開うちあ)” の例文
打開うちあけて云うと、恥しいことだけれど、私は、静子の夫の小山田六郎氏が、年も静子よりは余程よほどとっていた上に、その年よりも老けて見える方で
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「一向拙者には思案も御座らぬが——打開うちあけて申すと、寝ては夢、さめてはうつつと申しいが、あの方を夢にさえ見られぬ苦しさを、唯悶々として過して居る有様で御座るよ」
「検事殿、検事殿、あのラナイユという奴はやはり真犯人でしたよ。彼はそのことを死刑執行の日に告白しました。あの日斬首台の下で私を抱擁したときに残らず打開うちあけたのです」
自責 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
いじゃないか、その容体を聞かせたまえ、医師いしゃには秘密を打開うちあけていもんだ。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひとから内証を打開うちあけられた時ほど、是方こっちの弱身になることはありません。思いつめた御心から掻口説かきくどかれて見れば、しまいには私もあわれになりまして、染々しみじみ御身上おみのうえを思遣りながら言慰いいなぐさめて見ました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それに続いて、槌野君、園田氏、熊浦氏の順序で、九月二十三日の午後零時半から四時半頃までの行動を打開うちあけ合った。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
実は嘘を申しましたので、村の桶屋から三百フランの金を盗ったのは、このわたしでございます……恰度ジュールが復活祭の休暇やすみで帰っていたものですから、あれにそのことを打開うちあけますと
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
私は初代の家を訪ねて、彼女のやさしい養母とも話をした。そして、間もなく、私も初代も、銘々の母親に、私達の意中を打開うちあける様にさえなった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いっそのこと誰かにすっかり打開うちあけて、相談して見た方がよくはないかしら、などとも思われるのでありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
子供の行末も無論案じられたし、それに、恥しくて弟などには打開うちあけられもしないけれど、彼には、そんなにされても、まだおせいをあきらめかねる所があった。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼が十年という長い年月としつき、切ない恋を打開うちあけないでいたのも、この様な犯罪事件のかげに隠れて、彼女の弱身につけ込んで、その思いをとげようとしたことも
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼が彼女に恋を打開うちあけるまでには、たった三度の対面で充分だったことが、よくそれを語っている。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まだ父にも打開うちあけていない不安があるのです。母も知りません。母は二三日前から別荘に来ていますが、父の世話で手一杯なものですから、僕の顔色など気にしている余裕がないのです。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「有難う、よくほんとうのことを打開うちあけて呉れた」最後に明智が云うのでした。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
恐らくこれは栗原さんの取って置きの話のたねで、彼は誰にでも、そうした打開うちあけ話をしても差支さしつかえのない間柄あいだがらになると、待兼まちかねた様に、それを持出すのでありましょうが、私もある晩のこと
モノグラム (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いかな主人でも、それを打開うちあけさえすれば、納得するに相違ないのですから。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「今更いっても無駄だけれど、君は一体、そんな恐しい事柄を、他人のおれに打開うちあけてもいいのかい。最初はおれの方から聞き出したのだが、この頃では、君の話を聞いていると恐しくなる」
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、それには深いわけがあるのです。まず私の打開うちあけ話しを、終りまで御聞き取り下さい。そして、私が今まで、どんなにつらい辛抱しんぼうをして沈黙を守っていたかを御諒察が願いたいのであります。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自分の恋の打開うちあけ話を、書物にして衆人の目にさらすというのは、小説家でない私には、妙に恥しく、苦痛でさえあるのだが、どう考えて見ても、それを書かないでは、物語の筋道すじみちを失うので
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どこへ行くのかって、聞いて見ても、ちっとも云いません。母親が心配して、兄のふさいでいる訳を、手を変え品を変え尋ねても、少しも打開うちあけません。そんなことが一月程も続いたのですよ。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もうどんなことがあっても真実を打開うちあける気がしないのであった。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さも一大事を打開うちあけるのだといわぬばかりに
白昼夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
波越警部は正直に打開うちあける外はなかった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)