打遣うっちゃ)” の例文
のぞみの黒百合の花を取ってやがて戻って参りましょうが、しかし打遣うっちゃっちゃあおかれません、貴方に御内縁の嬢さんなら、わたくしにゃ新夫人様にいおくさま
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それにしちゃ馬鹿に遅いじゃねいか。何だかこの節お上さんの様子が変だぜ、店の方も打遣うっちゃらかしにして、いやにソワソワ出歩いてばかりいるが……」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
平岡は、仕方がない、当分辛抱するさと打遣うっちゃる様に云ったが、その眼鏡の裏には得意の色がうらやましい位動いた。それを見た時、代助は急にこの友達を憎らしく思った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
打遣うっちゃって置けば、そうなるのです。赤ん坊は生れながらの égoisteエゴイスト ですからね。」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いや、それは厄介やっかい千万。さりとて打遣うっちゃっても置かれまい。ひとつ白山まで参るとしましょう」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「では、俺にはそんな物打遣うっちゃらかして置かせて貰おうよ」とスクルージは云った。「聖降誕祭は大層お前の役に立つだろうよ! これまでも大層お前の役に立ったからねえ!」
はッくしょい! ハテ誰かまた陰口を利いておるそうな、いいわ、まず打遣うっちゃっておけ……。
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
打遣うっちゃッてお置きなさいヨ。あんな教育の無い者が何と言ッたッて好う御座んさアネ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あんた取合わずにまア柳に受けて居て下さると、あれえこともめえから、打遣うっちゃらかして居て下すって、其の時云った事が貴方のお気に障れば、其の時はどんなにきもがいれる事があっても
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「宮地君は二ヶ月前から発狂していたのです。それが三日前に何処へ行ったか、帰って来なくなったのです。何しろ精神病者ですから、打遣うっちゃって置くわけに参りません。随分心配しています」
凍るアラベスク (新字新仮名) / 妹尾アキ夫(著)
どうぞ私を打遣うっちゃってお逃げなすって下さいまし、おねがいでございます。貴方にこうして頂きますより殺されます方がどんなに心安いか分りません。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主人はやっぱり馬の話をしている。まだ馬かと思ってるうちに、また気が遠くなった。気が遠くなったのを、遠いままにして打遣うっちゃって置くと、忽然こつぜんぱっと眼があいた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何だか今更親子とも云いにくいと云うのは、女房子を打遣うっちゃって女郎じょろうを連れて駈落する身の越度おちど、本人が和尚さんとか納所とか云われる身の上になったからと云って、今わし親父おやじだと云っても
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「と云って見す見す打遣うっちゃって置くのも智恵がないじゃございませんか」
紅白縮緬組 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どうでございましょう、この辺は水は大丈夫でございますか、もしそれが心配だと貴方ばかりではお目の御不自由、と打遣うっちゃっちゃあ参られませんが。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうさ。まあそのうち何とか云って来るだろう。それまで打遣うっちゃっておこうよ」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大変な損でさあ。——虫の食ったんですか。いまいましいから、みんな打遣うっちゃって来ました。支那人の事ですから、やっぱり知らん顔をして、俵にして、おおかた本国へ送ったでげしょう。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは必竟ひっきょう世話を焼き過ぎるから、付け上って、人を困らせるのだろう。当分打遣うっちゃって置いて、向うから頼み出させるにくはない。と決心して、それからは縁談の事をついぞ口にしなくなった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)