手飼てがい)” の例文
「さればです。……これはまだ世間に洩れておりませんが、例の手飼てがい乱波らっぱ、渡辺天蔵の早耳ですから、おそらく信をおいてよいかと思いますが」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、女はけたたましい声をあげて叫ぶなり、章一をき飛ばすように起きて、両手を右の足首にやった。そこには手飼てがいの白猫が眼をいからしてきばをむきだしてうなっていた。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と鶴の一声ひとこえで、たちまち結構なお料理が出ました。水飴をすてると、お手飼てがい梅鉢うめばちという犬が来てぺろ/\皆甜めてしまいました。それなりにりますとお庭先がしんと致しました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
婚礼の祝宴の夜、アグリパイナは、その新郎の荒飲の果の思いつきに依り、新郎手飼てがいの数匹の老猿をけしかけられ、饗筵きょうえんにつらなれる好色の酔客たちを狂喜させた。新郎の名は、ブラゼンバート。
古典風 (新字新仮名) / 太宰治(著)
実申せば、このたびの川中島の大戦に、年来手飼てがいの家の子郎党など、可愛ゆきもの三千余名を失うて、この謙信も人知れず、愁心やし難いものがある。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、御隠家のおやしきには、いわゆる家の子と称する、狛家こまけ手飼てがいの郷士たちも、何十人と居ることは居ます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「戻ってくれた、戻ってくれた、手飼てがいの密使——」ハタハタという音さえ嬉しく聞いて、こぶしを出していると、馴れきっている銀色の家鳩いえばと、スーと下がってきて、その手へ止まった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……かねて“黄泥岡こうでいこう智恵ちえ取り”で奪いた金銀珠玉を五、六個の荷物にまとめ、手飼てがい壮丁わかもの十人ばかりにこれを護らせ、呉用と劉唐の二人が付いて、すぐ石碣村へ向って先発して行く。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これにって防守するとなれば、いかに脇坂甚内が、一死をもって当ったところで、たかだか手飼てがいの郎党の三、四十名や、にわかに糾合きゅうごうした地侍の百や二百で、踏みやぶれるわけは絶対にない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
瞬時にして広縁には、彼が手飼てがいの屈強ばかり十三、四名集まった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「左様、手飼てがい郷士ごうしどもです」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)