ドアー)” の例文
しかし晩餐ばんさんを済ましたあとで、自分の席へ帰ろうとするとき、誰でもやる通り、二階と一階のドアーを間違えて、私から笑われた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
親しい間とて案内も乞わずにすぐ彼の書斎兼応接室のドアーを叩いて中へ入ると、机に向って何か考えて居たらしい彼は入口へ首をじ向けながら
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ちやうど先頭の第一人が、三段を一足飛いツそくとびに躍上ツて、入口のドアーに手を掛けた時であツた。扉を反對のうちからぎいとけて、のツそり入口に突ツ立ツた老爺おやぢ
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼処には簇立せるシユロランの高き幹黒く、硝子窓にカーテン薄汚なく、入口のドアーは半ば斜に開きたり。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その時心にさす影が不安な感触を与えない時、私はそのままドアーを押して中に入るのである。
蠱惑 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「ではドアー越しに云ふわ——。グリツプが——ね。」
鸚鵡のゐる部屋 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
役所や会社へ勤める人の便宜べんぎを計るため、四時から八時までの規定になっているので、お延は比較的閑静なドアーを開けて内へ入る事ができたのである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あまりの事と學生は振返ツた……其のはなつらへ、風をあふツて、ドアーがパタンとしまる……響は高く其處らへ響渡ツた。學生は唇を噛みこぶしを握ツて口惜しがツたが爲方しかたが無い。悄々しを/\と仲間の後を追ツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)