たわぶれ)” の例文
旧字:
「おん身は我を信じたまはず、げにそれも無理ならず。世の人は皆我を狂女なりといへば、さおもひたまふならむ。」この声たわぶれとは聞えず。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
総てこの頃の事は皆一たわぶれで、お勢は心から文三にそむいたのでは無くて、只背いたふりをして文三を試ているので、その証拠には今にお勢が上って来て
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
和田与四郎壮士を挑む明治四年、新銭座しんせんざから今の三田みたに移転した当分の事と思う、或日あるひ和田義郎わだよしろう(今は故人になりました)と云う人が、思切おもいきったわぶれをして壮士を驚かしたことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
春雨のつれづれなるままのたわぶれにこそ、と書きたり。時に取りていとをかし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
日課をへてのちは、学校の向ひなる、「カッフェエ・ミネルワ」といふ店に入りて、珈琲カッフェーのみ、酒くみかはしなどして、おもひおもひのたわぶれす。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一時のたわぶれに人を冷かしたことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人々は半ば椅子より立ちて「いみじきたわぶれかな、」と一人がいへば、「われらは継子ままこなるぞくやしき、」とほかの一人いひて笑ふを、よそなる卓よりも、皆興ありげにうちまもりぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
お前様といふものある清さんとこのやうな身持の私が、すなほに彼此かれこれ申し候とも願のかなふはずなければ、何事も三谷さんの酒の上から出たたわぶれのやうに取成とりなし、一しよにさへ寝たならば
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)