我儘者わがままもの)” の例文
「どう致しまして、あの通りの我儘者わがままものでげすから、おかまい申すこともなにもできやしません、まあ一服おつけなさいまし」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とにかく私も我儘者わがままものでかなり気むつかしやだが、この私を一度も怒らせぬところは不思議に庄亮えらいところがある。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
父親もそれを気にして、お君はあの通りの我儘者わがままものだから家に置いたところで、お前とうまくいくわけはあるまい。
神はそんな理不尽な我儘者わがままものではない。かえってあたうだけ自然界の法則の基礎の上に奇蹟を行ない給う。
世の中の辛酸しんさんも、道理も理解することの出来ぬ、公方というような、最大特権階級の我儘者わがままものの、愛憎が、どのように変化のはなはだしいものであるかは説明を待たない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
姪は我儘者わがままもので、彼女の好きなことしかしたためしがない、もともと彼女は極くきゃしゃに生れついたもので、彼女の母親も父親もあれまでに彼女が育つとは考えなかったほどである
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
自体拙者は気に入らないので、しきりと止めてみたが、もともと強情我慢な母親おふくろいもと我儘者わがままもの、母に甘やかされて育てられ、三絃しゃみまで仕込まれて自堕落者に首尾よく成りおおせた女。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それから大学生は、彼女がどんな意地悪で我儘者わがままものであるかを、こまごまと話し出した。
起きると云うのに、なお起きろと責めるのは気に食わんものだ。主人のごとき我儘者わがままものにはなお気に食わん。ここにおいてか主人は今まで頭からかぶっていた夜着を一度にねのけた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
狭山さん、私は今更お礼を言ふと云ふのも、異な者だけれど、貴方は長い月日の間、私のやうなこんな不束者ふつつかもの我儘者わがままものを、能くも愛相あいそを尽かさずに、深切に、世話をして下すつた。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
両親も兄弟も無い有名な我儘者わがままもので、同時に小樽から函館へかけた、社交界の女王と呼ばれていた、龍代たつよさんと称する二十三歳になる令嬢が、小母さんと称する、中年の婦人を二三人お供に連れて
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
するとその返辞がふるってらあ、いや別に何処どこが悪いと申すほどでもござらぬが、ちと我儘者わがままものでな、まあ朝寝がしたいのでござろうよ、兎角どうも女は養い難しでござる、あははははは——てえ始末だ
おもかげ抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
我儘者わがままものにして躍らせたりしたであろうと思われる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ我儘者わがままものの花桐さん。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御尤ごもっともでございます、なにぶん行届かない我儘者わがままものでございますから、この後ともによろしく。どうかまあ、こちらへお上りくださいましな」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
商才のある駒三郎は甥と名乗って番頭になり、人相のよくない元助は下男に、文筆のある正吉は我儘者わがままもので友達ということになりましたが、二十六年間三人のしぼった額は容易なものではありません。
ところが、何しろ二人とも、野放図もない我儘者わがままものだったから、何処どこにも永く尻が落着く筈がねえ。仕舞しまいには、流れ流れて奥州街道を、越ガ谷の方まで、見世物の中にまじって落ちて行きさえしたのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「せんだってじゅう欽吾きんごがまた、いろいろ御厄介になりまして、御蔭おかげ様で方々見物させていただいたと申して大変喜んでおります。まことにあの通の我儘者わがままものでございますから一さんもさぞ御迷惑でございましたろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、あの通りの我儘者わがままものだから、お前さんのような、しっかりした者が付いていてくれると、わしも安心じゃ」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「茂吉は気の弱い男だが、物持ちの一人っ子らしい我儘者わがままもので、ツイ三次に乗せられて、大それた事をたくらみ、親娘二人を殺したが、あとで、居ても立ってもいられないほど後悔したに違いない」
その内部に我儘者わがままものがいたら、それを誰がどう処分しますか
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)