懐柔かいじゅう)” の例文
由来、懐柔かいじゅう、外交、隠忍いんにんなどは彼のしょうに合ったものではない。だから一面では、相変らず烈しい猛断と攻撃は敵にそそがれつつあった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらに一人、さらにまた一人と、六人いる少年たちが全部、暗黙のうちに共同戦線を張って、私を懐柔かいじゅうし、征服しようとした。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
仮令彼女の里方は廣介の常套じょうとう手段によって、懐柔かいじゅうせられたとしても、彼女自身ののない悲しみは、どう慰めようすべもないのでありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
相手のふところのなかに飛びこんだのだが、この丸万には妙に人から愛されるところがあって、たちまち親分を懐柔かいじゅうした。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
川島はにやりと笑ったと思うと、たちまち小栗を懐柔かいじゅうした。保吉はいまだにこの少年の悪智慧わるぢえの鋭さに驚いている。川島は小学校も終らないうちに、熱病のために死んでしまった。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
交渉や話し合いや妥協によることであり、収攬手段というのは、利益や恩恵を施し、金銭や恩賞や栄誉や地位を与えて、人心を収攬し懐柔かいじゅうすることであり、教化宣伝手段というのは
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
墨夷ぼくいは人心を懐柔かいじゅうするの手段大いに英夷に劣る。ここを以てひそかに喜び申し候。しかるに機は得難く失い易し。墨夷の為す所市中の人心を失うとも、また数十年無事ならば人心もおのずか帖服ちょうふくすべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
さらに一人、さらにまた一人と、六人いる少年たちが全部、暗黙のうちに共同戦線を張って、私を懐柔かいじゅうし、征服しようとした。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、家康は、秀吉が信雄をこんなふうに懐柔かいじゅうしているのを、いまは第三者のように、傍観しているほかはなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
復讐事業に着手する前に、君が先ず計画したのは、この僕を懐柔かいじゅうして、邪魔立てさせない様にすることでした。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それとも、わが百万の大軍と相まみえて、呉国をいて滅亡へ導くつもりなりや否や、即刻、回報あるべし——という強硬なる半面威嚇いかく、半面懐柔かいじゅうの檄文だった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
決して、力や威をもって、懐柔かいじゅうできない相手とは、小牧以来、秀吉がとうにているところだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾たびか慰撫いぶの使者を伊丹いたみへ向け、村重を懐柔かいじゅうして、この事件を一先ず内部的なものに局限きょくげんして済ませたいと、極力つとめて来たここ二ヵ月間のあとを眺めて、いかに伊丹の離反りはんとその影響が
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉の人心懐柔かいじゅうは、すぐ功を奏した。一群の空論家が、しかも古い故典旧慣をとなえてみても、それが何の力であるはずもない。世は実力の時代だ。実力のみが人をうごかし世を処理してゆく。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)