トップ
>
慍
>
おこ
ふりがな文庫
“
慍
(
おこ
)” の例文
いつもの
慍
(
おこ
)
つてる時に出る声の返辞。すると私は、無上に気に入らなくなつて、何がなんでもそれをどうかしなければならなくなる。
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
「不意にお呼止めしたのを
慍
(
おこ
)
りもなさらないで、よく来て下さいました。ほんとうにいつか又お目にかかりたいものですね」
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
こちらの三枝さんの地所へまで目をつけて、それを
欲
(
ほ
)
しがって何度も周旋人を寄こしたりして、奥さんを大へんお
慍
(
おこ
)
らせになった事もありました。
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
おふくろは眼でもつて、些と
忌々
(
いま/\
)
しさうにして見せたが、それでも
慍
(
おこ
)
りもしないで、「お前は眞ンとに
思遣
(
おもひやり
)
が無いんだよ。」と
愚痴
(
ぐち
)
るやうにいふ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
子を生み得ないのは女の恥だつて、
慍
(
おこ
)
りきつてゐなさるくらゐだのに、当人のお前と云つたら、
可厭
(
いや
)
に落着いてゐるから、憎らしくてなりはしない。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
▼ もっと見る
慍
(
おこ
)
ったような調子で自分は笑いもせず宏子ははる子をとがめるが、はる子が何を笑っているのかはよくわかった。
道づれ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「尾の附根が光り出したね、ちょいと失礼だけれど、お尋ねしますがね、
慍
(
おこ
)
り出したらいけないよ。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
おふくろはほんとに
慍
(
おこ
)
ったのかしら……と彼は少しづつ気になる。しかし家へ帰ればまた喧嘩しさうなのですぐには帰れない。前吉はソーダ水をストローで
攪
(
かきま
)
ぜて、ぢっと考へ込む。
おふくろ
(新字旧仮名)
/
原民喜
(著)
そんなに
慍
(
おこ
)
つてばかりいないで、あたしのいふ事もちつたァ聞いておくれな。
もつれ糸
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
彼の父の
慍
(
おこ
)
つて居る手紙のなかの、「大勇猛心」と呼んで居るものはどんなものか。それを何処から
齎
(
もたら
)
してどうして彼の心へ植ゑ込むことが出来るか。どうして彼の心に
湧立
(
わきた
)
たせることが出来るか。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
絶望的な哀願をもう一度繰返すと、急に、
慍
(
おこ
)
ったような固い表情に変り、眉一つ動かさず
凝乎
(
じっ
)
と見下す。今や胸の真上に蔽いかぶさって来る真黒な重みに、最後の悲鳴を挙げた途端に、正気に返った。
牛人
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
作は少し
慍
(
おこ
)
ったような風で、お島の姿を見ても、声をかけようともしなかったが、大分たってから
明朝
(
あした
)
の仕かけをしているお島の側へ、汚れた茶碗や小皿を持出して来た時には、
矢張
(
やっぱり
)
いつものとおり
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
主翁はしかたなく
慍
(
おこ
)
り慍り起きて来た。
怪しき旅僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
須貝
慍
(
おこ
)
らなくったっていいさ。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
雅
(
まさ
)
さんは男だからさうでせうけれど、
私
(
わたし
)
は
諦
(
あきら
)
めません。さうぢやないとお言ひなさるけれど、雅さんは
阿父
(
おとつ
)
さんや
阿母
(
おつか
)
さんの
為方
(
しかた
)
を
慍
(
おこ
)
つてお
在
(
いで
)
なのに違無い。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「
慍
(
おこ
)
ったね、じゃ言うよ、人を好くということは人間の持つ一等すぐれた感情でございます。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
一太の母は、不平そうに
慍
(
おこ
)
ったような表情を太い縦皺の切れ込んだ眉間に浮べたまま次の間に来た。小さい餉台の上に赭い素焼の
焜炉
(
こんろ
)
があり、そこへ小女が火をとっていた。
一太と母
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
が、人一倍強情な爺やの方はともかくも、婆さんの方はよくそれまで辛抱したものですが、それは女の
料簡
(
りょうけん
)
ですから、たまには愚痴の一つも出るでしょう。そうすると爺やは大へんに
慍
(
おこ
)
ります。
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「もう少し歩いて行きましょう」と女は
濠端
(
ほりばた
)
に添う道の方へ彼を誘った。水の面や、夕暮の
靄
(
もや
)
や、枯木の姿が何かパセチックな予感のようにおもえた。女は黙って
慍
(
おこ
)
ったような顔つきで歩いている。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
未納
慍
(
おこ
)
らないでよう。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
そんなことを言出さうものなら、どんなに
慍
(
おこ
)
られるだらうと、それが見え透いてゐるから、
漫然
(
うつかり
)
した事は言はれずさ、お前の心を察して見れば
可哀
(
かあい
)
さうではあり
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
未納
慍
(
おこ
)
るから、厭。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
慍
漢検1級
部首:⼼
13画