情合じやうあひ)” の例文
さうはないで、縁もゆかりも無い者からでも、矢張正真物しやうしんものの涙を買ふところに、一寸女房の情合じやうあひが見えて可笑をかしい。
あにはたゞ手前勝手てまへがつてをとこで、ひまがあればぶら/\して細君さいくんあそんでばかりゐて、一向いつかうたよりにもちからにもなつてれない、眞底しんそこ情合じやうあひうすひとぐらゐかんがへてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
よく/\言ひ様にこまつたと見えて、斯う答へたが、子供心にも父を憐むといふ情合じやうあひは其顔色に表れるのであつた。見れば省吾は足袋も穿いて居なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
小説的かも知れんけれど、八犬伝はつけんでん浜路はまじだ、信乃しの明朝あしたは立つて了ふと云ふので、親の目を忍んで夜更よふけひに来る、あの情合じやうあひでなければならない。いや、妙だ! 自分の身の上も信乃に似てゐる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
心から老牧夫の最後をいたむといふ情合じやうあひは、斯持主の顔色に表れるのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その頃丁度「帯屋」を語つてゐたので、そのあくる日から、お絹が姑のおとせに苛められるくだりに、女房かないの寝物語を使つて語つてみると、情合じやうあひがいつになくよく出てゐるといつて、大層な評判を取つた。