恁麼こんな)” の例文
華やかな、晝を欺く街々の電燈は、どうしても人間の心を浮氣にする。情死と決心した男女が恁麼こんな街を歩くと、屹度其企てを擲つて驅落をする事にする。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
(それでは恁麼こんなものでこすりましてはやはらかいおはだ擦剥すりむけませう、)といふと綿わたのやうにさはつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
瞬きをしてゐる間に、誰かが自分を掻浚つて來て恁麼こんな曠野に捨てて行つたのではないかと思はれる。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
たきれましたとまをしまして丁度ちやうどいまから十三ねんまへ可恐おそろしい洪水おほみづがございました、恁麼こんなたかいところまでかはそこになりましてね、ふもとむらやまいへのこらずながれてしまひました。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴僧あなた、おそば汗臭あせくさうはござんせぬかいとんあつがりなんでございますから、うやつてりましても恁麼こんなでございますよ。)といふむねにあるつたのを、あはてゝはなしてぼうのやうにつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は生れてから、恁麼こんな酷い目に逢つた事は滅多にない!
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)