心胸こころ)” の例文
あの北極の太陽に自己おのれ心胸こころたとえ歌った歌、岸本が東京浅草の住居すまいの方でよく愛誦あいしょうした歌をのこして置いて行ったのも同じ仏蘭西の詩人である。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『まあおじいさまでございますか!』わたくしおぼえずきて、祖父じじかたすがってしまいました。帰幽後きゆうごわたくしくらくら心胸こころに一てん光明あかりしたのはじつにこのとき最初さいしょでございました。
あの赤熱しゃくねつの色に燃えてしかも凍り果てる北極の太陽に自己おのれ心胸こころたとえ歌った仏蘭西フランスの詩人ですら、決してただふくろうのように眼ばかり光らせて孤独と悲痛の底に震えてはいなかったことを想像し
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あるいは——一旦いったん失われた父らしい心胸こころを復た元へ引戻すことも出来ようか——離散した親子、夫婦が集って、もう一度以前のような家を成したい——こう彼女が、一縷いちるの希望を夫につなぎながら
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)