心尽こころづく)” の例文
旧字:心盡
そこへ下宿のお内儀かみさんが、井戸の中に漬けて冷やしてあったビールを搬んできた。それは大隅学士の心尽こころづくしだった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
午餐ごさんには諏訪湖のこひしじみとを馳走になつた。これは、『どうも何もなくていけないが、鯉と蜆でも食べて行つてくれたまへ』といふ赤彦君の心尽こころづくしであつた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ただ、にいさん、僕あ、君の庇護ひごに対して、それから、ねえさん、君の手厚い心尽こころづくしに対して、僕あお礼をいうよ
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
謙遜な奉仕の天使、彼等が我等と共に在るの日、高慢な我等は微笑を以て其弱点じゃくてんを見つゝ十分に尊敬をはらわず、当然の事の如くながらにして其心尽こころづくしの奉仕を受けやすい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私の屋根裏調査以来の心尽こころづくしを知ると、無気むげに私を排斥することは出来なかったし、糸崎検事などは、そういうことになれば丁度幸だから、ちょいちょい小山田家を見舞って
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あなたとわたくしとはおさな時代ときからのしたしい間柄あいだがら……ことにあなたが何回なんかいわたくし佗住居わびずまいおとずれていろいろとなぐさめてくだされた、あの心尽こころづくしはいまもうれしいおもひとつとなってります。
佐々砲弾の心尽こころづくしだった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)