徹頭徹尾てっとうてつび)” の例文
従って余の博士を辞退したのは徹頭徹尾てっとうてつび主義の問題である。この事件の成行なりゆきを公けにすると共に、余はこの一句だけを最後に付け加えて置く。
博士問題の成行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この夜叉王は徹頭徹尾てっとうてつび芸術本位の人で、頼家が亡びても驚かず、娘が死んでもかなしまず、悠然として娘の断末魔だんまつまの顔を写生するというのが仕所しどこ
しかし逆手をつかったことといい、犯罪を目の前にみていて気がつかなかったことと云い、徹頭徹尾てっとうてつび私の大敗北ですよ
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人間は徹頭徹尾てっとうてつび利己的の動物であるといい、強いものは弱いものをおとし踏みにじるのが人生である、阿修羅あしゅらのようになってそうしたことのできるものは謳歌おうかされ
親子の愛の完成 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
注目されていた飯島は、徹頭徹尾てっとうてつび演説口調で、村を語り、郡を語り、県を語ったが、話の内容は、とかく政治勢力の問題にふれ、地についたところがほとんどなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それは何も秋山図に、見惚みとれていたばかりではありません。翁には主人が徹頭徹尾てっとうてつび鑑識かんしきうといのを隠したさに、胡乱うろんの言を並べるとしか、受け取れなかったからなのです。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ばかを申せ! 拙者が貴公を訴人したなどとは、徹頭徹尾てっとうてつび貴様の誤解だ! 邪推じゃすいじゃ!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、激越な辞句をもって、徹頭徹尾てっとうてつび、秀次の性格の短所を、突いているのであった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この徹頭徹尾てっとうてつび矛盾した僕の行為が、常に僕を不断の悔恨と懊悩とに苦しめるのだ。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
天狗跳てんぐとびをすると、彼は、徹頭徹尾てっとうてつび、台になっているほうがいいという。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
やッぱりお袋のしょうを受けてるとみえて、それこそ徹頭徹尾てっとうてつびいまのソノ農婦というでもないが、シカシともかくも教育はないの——そんなら人のいうことならハイと言ッて聞てるがいいじゃないか?
あいびき (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
然し彼は徹頭徹尾てっとうてつび単純にしていつわることを得為えせぬ男で、且如何なる場合にも見且感ずるを得る自然の芸術家であったことを忘れてはならぬ。余は寄生木によって、乃木大将夫妻をヨリ近く識り得た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
合わせ徹頭徹尾てっとうてつび否認するのでいよいよらちが明かなくなった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
このまゝ、帰ってしまえば、徹頭徹尾てっとうてつび全敗である。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
徹頭徹尾てっとうてつび、彼は知らないと答えた。みどりが脱脂綿を持っていたと白状したがお前は知っているかと訊いたところ、彼は「それは嘘だ」と言って強く否定した。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それでただ今校長及び教頭のお述べになったお説は、実に肯綮こうけいあたった剴切がいせつなお考えで私は徹頭徹尾てっとうてつび賛成致します。どうかなるべく寛大かんだいのご処分をあおぎたいと思います
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
貞盛の地方事情の説明は、徹頭徹尾てっとうてつび、彼自身のための巧みな弁護であった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立派に言い切ったから、金山寺屋が保証ほしょうすることではあり、もうそれ以上詮議せんぎの要もあるまいと、かえって役人のほうが安心したくらいで、黒門町、これは徹頭徹尾てっとうてつび当方の間違いであったぞ、許せよ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
だから徹頭徹尾てっとうてつび、赤外線しか映らないテレヴィジョンである。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)