御斟酌ごしんしゃく)” の例文
「どうかまあ、そんな御斟酌ごしんしゃくには及びませんよ。手前は後から入らせて頂きますから。」と、チチコフが言うのである。
「あいや、こういう中、夜食の御斟酌ごしんしゃくなどにはおよばん。それよりも、藤掛三河どのにお顔を拝借したいと、はばかりながら、これへお呼びください」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右は意を尽さざるところ多けれども、これによりてわが心事の一端なりとも御斟酌ごしんしゃく下され候わんにはさいわいにこれあり候
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「なんの、なんの、そんな御斟酌ごしんしゃくには及びません」と探偵は、引いたカーテンを払いながら、愛想よく応酬した。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
すでに両者の関係やら目的を述べる際にも自然の勢で、不知不識しらずしらずの間にこの問題に触れているのはもちろんでありますから、その辺は御斟酌ごしんしゃくの上御聞を願います。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは御斟酌ごしんしゃくに及びません。いずれ満二ヵ年の中にはこのネパール国へもう一度私は参ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
だから、どうぞわれわれには御斟酌ごしんしゃくなく、かまわずお続けください。いったいなんのご用です
ただし事皆世上には知られぬよう、臙脂屋のためにも此方のためにも、十二分に御斟酌ごしんしゃくあられい。ハテ、心地よい。木沢殿、事すでにすべて成就も同様、故管領御家再興も眼に見えてござるぞ。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すべて、いささかも御斟酌ごしんしゃくに及びません。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御斟酌ごしんしゃくの儀、柳生殿にも、御承知のうえで、先へ、道場へ通ってお待ちなされております。おさしつかえなくば」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
して極端まで持って行った御話ですからその辺は御斟酌ごしんしゃくを願います
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ああいや、それは御斟酌ごしんしゃくがすぎるというものです。たとえ新将軍家のお耳に入ろうと何のおそれがございましょう。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それゆえにこそ強く大きく振舞えますものを、御斟酌ごしんしゃくでは、却って、強右衛門が、臆病に相成って困りまする
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謙信、そのほか連れ者も、みな北国そだちの歯の根達者、構えて、献立に骨抜きの御斟酌ごしんしゃくは要りもうさぬ。はははは……まずまず、御返辞は右の通りである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
意外な御斟酌ごしんしゃくではある。御主人たるあなたが、そのように仰せられては、半兵衛は何と御挨拶してよいやらわからぬ。——なぜ、半兵衛見えたかとは仰せ下さらぬか。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何の何の、御斟酌ごしんしゃくには及ばぬ。もとよりこのたびのいくさは、家康の私心私謀ししんしぼうに出たものではおざらぬ。——お身たちとて、その発端の儀は、しかと、お分りであろうがの」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其方儀そのほうぎ、藩の御法を無視し、おのれ一個の我意をもって、弦之丞を逃がしたとは不都合至極しごく、その上御前をおそれぬ暴言、死をあとうべきやつなれど、乱心であろうとありがたい御斟酌ごしんしゃく、即刻
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何の御斟酌ごしんしゃくですか。主君を殺した逆臣に組する弓矢は忠興にはありません。——妻の処置しょちは、良人たるわたくしの胸でします。そして、信長公の御無念をはらさんとする何人とも力を協せて、光秀を
受けるものかな。正成においても、まずはあの時申したことば以外に何も答えは持ちあわさん。う疾う、立ち去って、尊氏へ申されよ。好意は謝すが、正成のいまは、すこぶる本懐、なんの御斟酌ごしんしゃくにはおよび申さぬ、と
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんの、御斟酌ごしんしゃくには」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)