彼時かのとき)” の例文
横ぎりて六時發横川行の滊車に乘らんと急ぎしに冗口むだぐちといふ魔がさして停車塲ステーシヨンへ着く此時おそく彼時かのときはやく滊笛一聲上野の森にけぶり
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
曰く、彼時かのときの発心なり、彼時の心機妙変なり。彼時に得たるものが深く胸奥に印して、抹除すること能はざればなり。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いやとよ、和殿が彼時かのとき人間ひとに打たれて、足をやぶられたまひし事は、僕ひそかに探り知れど。僕がいふはその事ならず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
この苧纑をがせ商人、或時あるとき俳友はいいうの家に逗留とうりうはなしくだんの事をかたいだし、彼時かのとき我六百の銭ををしみ焼飯をかはずんば、雪吹ふゞきうち餓死うゑじにせんことかの農夫のうふが如くなるべし
然れども彼時かのときは只眼にて観るのたのしみなるのみなりしも、現今我牧塲としてかかる広漠の地にて、且つ多数の我所有たる馬匹の揃うて進みて予に向うて馬匹等は観せたしとの意あるが如きを感じて
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
この苧纑をがせ商人、或時あるとき俳友はいいうの家に逗留とうりうはなしくだんの事をかたいだし、彼時かのとき我六百の銭ををしみ焼飯をかはずんば、雪吹ふゞきうち餓死うゑじにせんことかの農夫のうふが如くなるべし
われはなんじ毒牙どくがにかかり、非業にも最期をとげたる、月丸が遺児わすれがたみ、黄金丸といふ犬なり。彼時かのときわれ母の胎内にありしが、そののち養親やしないおや文角ぬしに、委敷くわしき事は聞きて知りつ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
振ひやゝ二杯目を喰ひ盡さんとする此時遲く彼時かのとき早く又もヒラリと飛び込みたり是はと驚く後より左りに持つ椀へつゆ波々なみ/\がれたりシヤ物々しと割箸のソゲを取り膳の上にて付き揃へ瞬く間に三椀を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
曰く彼時かのときの変化なり。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)