延々のびのび)” の例文
敵の出で来るを恐れては勿々なかなか軍はなるまじ、その上に延々のびのびとせば、横山つい攻落せめおとさるべし。但し此ほかに横山をたすけんてだてあるべきや。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「いかにも、都のあの変事で、去年は延々のびのびとなり申したが、どうやらこの秋には、部屋住みの高氏も、を持つ男並おとこなみとなりそうでござりまする」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのなかから流行はやりのフロツクコートも一着こしらへたが、出発間際になつて風邪を引込んで、延々のびのびになつてゐるうち、つい沙汰止さたやみになつてしまつた。
「では、早速、その後藤という人をやといましょう」と快く承諾されたのでありました。私はこの言葉を聞いた時は、まことに延々のびのびするほどうれしく思いました。
去年、親の石碑もでかいのを建立したしするので、来ようとは思いながら御用が多くてつい延々のびのびさ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
それを黄金の杖で繋ぎ、向かい合って延々のびのびと立っているのが、女方術師の華子である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
将軍家への御目見おめみえも病気と称して延々のびのびになったまま、重役方に手蔓てづるをたぐって、どうやらこうやら家督は仰せ付けられましたが、あまりの低能振りに、武家方からは嫁のくれ手もありません。
「うかとだんくだせぬのは分りきっているが、何せい、こう延々のびのびでは、ここがたまらぬよ、仲時もほとほと疲れた」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まあせっかく、殿にも御意がうごいたところ、今さら、御中止にもなれまいが、御病態を作って、藩のほうへも、延々のびのびにしておかれたがよろしゅうござるぞ。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
これから先も、延々のびのびになればなる程、脱盟者を出すだろう。変節は憎むが、人間の誰にもある弱点でもある。あながち去る者ばかりを責めることはできない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われら将軍家に扈従こじゅうともがら、当国の朝倉殿こそは、唯一のお味方たる大名と、頼みにいたしぬいて、今日まで内々、数度の交渉やら、おすがりもいたしたなれど、最後の御返辞、延々のびのびのまま
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という風に相かわらず寛大であるし、外部との交渉こそ、まったくって、別当の中院から一歩もひとりでは出さない事に以来やかましくはなっていたが、髪をろす問題は、延々のびのびになっていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)