ほうき)” の例文
………耕助が路端みちばたの草を引き抜いてほうきのような束を作って持っているのを何にするのかと思ったら、それに蛍を留まらせて捕えるのであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
栃木県のものとしては、益子ましこの焼物や、烏山からすやまの和紙や、鹿沼かぬまほうきをまず挙げねばなりません。それほど仕事は盛であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
角ががっしりしてたわみ、両耳が垂れ、そうして悠揚と突っ立っていた。糞尿に黒く湿ったその床も、それでもほうきの目がよく届いていた。青草のにおいもした。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
それで影絵が消えて仕舞ふと、彼は勝利を感じて箸をしまつた。南禅寺の本堂で、卸戸おろしどをおろす音がとどろいた。その間にほうきで掃くやうな木枯こがらしの音が北や西に聞えた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
手拭てぬぐいと二銭銅貨を男に渡す。片手には今手拭を取った次手ついでに取ったほうきをもう持っている。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
味噌桶みそおけ、米俵、酒のかめ、塩鮭の切肉きりみ醤油しょうゆ桶、ほうきちり取り、油壺あぶらつぼ、綿だの布だの糸や針やで室一杯に取り乱してあり、弓だの鉄砲だの匕首あいくちだの、こうした物まで隠されてあるが
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
熊手がく。ほうきが引っ掻く。
落葉吹く風にほうきをとどめ見る
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
荒物屋を訪ねますと、思いがけなくもそれは美しいほうきを見出します。田舎館いなかだての産でありまして、編み方によき技を示します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ほうきありすなわちとつて落葉掃く
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
それは「鹿沼帚かぬまぼうき」の名で何処でも知られているものであります。附根つけねがふくらませてあって、色糸や針金でかがり、ゆったりした大型のほうきであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
徐々と掃く落葉ほうきに従へる
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
更衣ころもがえすそをからげてほうき持ち
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
客もまたほうきとりつゝ菊の庭
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)