峻拒しゅんきょ)” の例文
将来の詩人はけっしてそういうことをいうべきでない。同時に詩および詩人に対する理由なき優待をおのずから峻拒しゅんきょすべきである。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
由って虎を霊視するの極、本来動物崇拝を峻拒しゅんきょする回教徒中にあっても、かつて上帝が虎と現じて回祖マホメットと談じたと信ずる輩すらある
貞烈なお関の峻拒しゅんきょにあって、首を三太刀まで切った上、茣蓙ござに包んで目黒川に流した始末を、平次は手に取るごとく語り聞かせたのです。
この月夜の果樹園のような空気を呑んで陶酔を覚えたものにとって、「緑色の羅紗らしゃ」の手ざわりは一生峻拒しゅんきょ出来ない魅惑なのだ。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
もしそれが解決されなければ、他のいかなる解決をも峻拒しゅんきょする。——つまり、より大きな肯定へ向っての深い無意識の有志だ。
恐怖の季節 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
そこで氏郷は之をたすけて一揆を鎮圧する為に軍を率いて出張したが、途中の宿々しゅくじゅくの農民共は、宿も借さなければ薪炭など与うる便宜をも峻拒しゅんきょした。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
うしろから肩をたたく。げえっ! 緑のベレ帽。似合わない。よせばいいのに。イデオロギストは、趣味を峻拒しゅんきょすか。でも、としを考えなさい、としを。
渡り鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
民主主義の徹底する時代には偶像崇拝の思想の幻滅すべきは勿論のこと、法外な英雄崇拝の思想もまた自我の退嬰萎縮たいえいいしゅくとして峻拒しゅんきょされねばならないことだと思います。
激動の中を行く (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
初めのうちの男の峻拒しゅんきょなどは上べだけのものでしかない、ときめこんでいる大胆さなのである。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふうしたのであったが意外にも彼女はにべもなく峻拒しゅんきょした自分は一生夫を持つ気はないことに佐助などとは思いも寄らぬとはなはだしい不機嫌であったしかるに何ぞはからんそれより一年を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
無念ながらご三家ご連枝の威権によって剣もほろろに峻拒しゅんきょされたあとであり、三百諸侯を洗うについては、これまた悲しいことに月とすっぽんどころか、あまりにも身分が違いすぎましたので
いっさいの空想を峻拒しゅんきょして、そこに残るただ一つの真実——「必要」! これじつに我々が未来に向って求むべきいっさいである。
フランス軍の将校のためにピアノの演奏を迫られ、敢然かんぜん峻拒しゅんきょして二百キロを歩んでウィーンに帰ったことなどもあった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
曹丕そうひは、門でこばまれた。兵隊たちに峻拒しゅんきょされて、やむなく後へ帰ってしまった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぴたりと面会を峻拒しゅんきょいたしました。
美奈子は毅然として丹波丹六を峻拒しゅんきょしたのです。明るい電灯の灯を満面に浴びてテーブルを隔てた二人、もうそれは恋人でも許婚いいなずけでもなく、血を見なければ止まぬ敵同士です。
ブラームスが俗流にびず、新奇なもの浮薄なものを峻拒しゅんきょして
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)