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山王樣
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さんわうさま
偶にはくるが、もう
以前のやうに
山の
手の
邸町、
土べい、
黒べい、
幾曲りを
一聲にめぐつて、
透つて、
山王樣の
森に
響くやうなのは
聞かれない。
不思議に
窓の
空所へ
橋に
掛つた
襖を
傳つて、
上りざまに
屋根へ
出て、それから
山王樣の
山へ
逃上つたが、
其處も
火に
追はれて
逃るゝ
途中、おなじ
難に
逢つて
燒出されたため、
道傍に
落ちて
居た
山王樣のお
渡りの、
猿田彦命の
面を
覺えたのである。