小部屋こべや)” の例文
葉子はその朝暗いうちに床を離れて、蔵の陰になつた自分の小部屋こべやにはいって、前々から片づけかけていた衣類の始末をし始めた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
少年は、気がちがったようになって、すぐそばの小部屋こべやへあたしをむりやり押し込むようにしながら
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
とき、おかみさんが、二かい小部屋こべやへはいっていると、おんなもついてて、こういました。
飯坂いひざかと、温泉をんせんは、はしひとへだてるのであるが、摺上川すりかみがはなかにして兩方りやうはうから宿やどうらの、小部屋こべや座敷ざしきも、おたがひふのが名所めいしよともふべきである……と、のちいた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玄関を這入はいると二畳で、六畳の客間があり居間いまが六畳、それに四畳半の小部屋こべやが附いている上に、不思議なことには直ぐ部屋続きに八畳敷き位の仕事場とも思われる部屋がある。
がけぞひの暗き小部屋こべやが涼しくて
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
海ちかき下層した小部屋こべや
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
橋の手前の小さな掛け茶屋には主人のばあさんがよしで囲った薄暗い小部屋こべやの中で、こそこそと店をたたむしたくでもしているだけだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
葉子は今の心と、けさ早く風の吹き始めたころに、土蔵わきの小部屋こべやで荷造りをした時の心とをくらべて見て、自分ながら同じ心とは思い得なかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)