家鳴やなり)” の例文
地震のような家鳴やなりが次に起った。ふすまも障子も滅茶めちゃ滅茶に踏みあらして、更に、座敷ざしきの真ん中へ、樽神輿をほうりだしたのである。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
侍「なに甜めるものか、うーんと振解ふりほぐして、枕元にあった無反むそりの一刀を引抜いて、斬付けようとすると、がら/\/\と家鳴やなり震動がした」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鍋焼饂飩うどん江戸児えどっこでない、多くは信州の山男と聞く。……鹿児島の猛者もさが羅宇の嵌替すげかえは無い図でない。しかも着ていたのが巡査の古服、——家鳴やなり震動大笑おおわらい
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
言いも終らぬ時に、轟然ごうぜんたる響きと共にこの一室が、裂けて飛んだかと思われる家鳴やなり震動です。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それが恐ろしさと馬鹿らしさに皆、忘れても和尚を負かさぬように気を付けているが、それでも時々大地震のような家鳴やなり、震動が起るので、事によるとやはり狐狸こり仕業しわざかも知れない。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
家鳴やなり震動のけたたましく
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
家鳴やなり震動のけたたましく
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
つづみを打つ、はちをたたく、猥歌わいかをうたう。あげくに今、しりもちでもついたような、家鳴やなりと、男女の笑い声が、一しょに沸いた。
小浜屋の主婦おかみふすまをドシンと打ったのが、古家だから、床の壁まで家鳴やなりをするまで響いたのである。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いか。よした。どん、すとん、と身上しんしやうかるい。けれども家鳴やなり震動しんどうする。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)