かみ)” の例文
「おのれ、そこの御高札を見ぬか、いや、辻々の掲示はもちろん、あれほど、厳しゅうかみより布令ふれてある念仏停止ちょうじのことを知らぬのか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あのお方が俺達を贔屓ひいきにしている、——と云うことが知れているので、俺ら相当悪事をしても、おかみでは目こぼし手加減をしてくれる」
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
表向きは、かうした色は許されぬものと次第になつて来たけれど、家の女部屋までは、かみの目が届くはずもなかつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
かみの御法を破り兇状を持つ身の上なれば此の土地へ立廻る事はなるまい、しかるに此の界隈で悪い事を働き、官の目に留れば重き処刑になる奴だにって
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今兵隊に取られるなあ惜しうごわすが。これはおかみのことで仕様がありませんや。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
かみの倉をかすめている生徒監をみんなして敬い、その健在と救いとを学校で祈るほど甘く出来ているものなら、フォン・コーレンやラエーフスキイを、不信仰者だというだけで毛嫌いするのは
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
表向きは、こうした色の禁令が、次第に行きわたって来たけれど、家の女部屋までは、かみの目も届くはずはなかった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
相手は与力、かみ役人そうな。では早く身分をなのり、かえって助けを乞おうものと、そう清々すがすがしく宣ったのであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何卒なにとぞ此の懐剣あいくちにて是非も無き事と諦め得心の上自害して呉れられよ、尤も我等も遠からずかみのお手にい死刑に臨む時、冥途にて其許に遇い詫言を申すべし
ふと、その答えが、傍らの橋畔きょうはんに見出された。いかめしい厚札あつふだの高札に書かれてあるかみの掲示である。吸いつけられるように、彼はその前に立った。読み下してみると
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……浪速の豪商淀屋辰五郎、百万にも余る巨富を積み、栄耀栄華を極めたが、元禄年間かみのお咎めを受け、家財一切を没収されたこと、汝といえども伝え聞いていよう。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「やっ……。これは」やがて愕然がくぜんと気づいたのは、常に人々の出入りする表の門に、大きな丸太が二本、斜交はすかいに打ちつけてあり、そこに、何やらかみの高札らしいものが掲げてあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)