安宿やすやど)” の例文
細い横丁を二三度あちこちへ折れて、飛びこんだのはアパートメントとは名ばかりの安宿やすやどの、その奥まった一室——彼等の秘密のかく
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
よるになったときに、おひめさまは、みんな自分じぶんのようなまずしいようすをした旅人たびびとばかりのまる安宿やすやどへ、はいってまることになされました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ごぞんじの安楽村に、おうっていう安宿やすやどがありまさ。宿屋掟やどやおきてのご定法じょうほうで、毎晩の泊り客には、行く先、職業、住所、年齢をちゃんと書かせる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はづかしいおちましていまうちもの御座ござりませぬ、寐處ねどころ淺草町あさくさまち安宿やすやど村田むらたといふが二かいころがつて、ひたとき今夜こんやのやうにおそくまでこともありまするし
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山西はふと小女こむすめじぶんの知っている花川戸はなかわど安宿やすやどれ込もうと思いだした。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
安宿やすやどを見つけて、彼は、泊りこんだ。その晩、使い屋をたのんで、さっきの金に手紙を付け、すぐ河原町の薬師寺にいる渋沢へ返しにやった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は棺のあとに見えがくれについて、例の安宿やすやどへ送りこまれるところまでたしかめた。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)