孤燈ことう)” の例文
新字:孤灯
例へば雪みぞれのひさしを打つ時なぞ田村屋好たむらやごのみの唐桟とうざん褞袍どてらからくも身の悪寒おかんしのぎつつ消えかかりたる炭火すみび吹起し孤燈ことうもとに煎薬煮立つれば
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大学を卒業して数年の後、遠き倫敦の孤燈ことうの下に、余が思想は始めてこの局所に出会しゅっかいせり。人は余を目して幼稚なりといふやもはかりがたし。余自身も幼稚なりと思ふ。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
をんな暫時しばし恍惚うつとりとしてそのすゝけたる天井てんじやう見上みあげしが、孤燈ことうかげうすひかりとほげて、おぼろなるむねにてりかへすやうなるもうらさびしく、四隣あたりものおとえたるに霜夜しもよいぬ長吠とほぼえすごく
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)