子猫こねこ)” の例文
子猫こねこをくわえたままに突っ立ち上がって窓のすきまから出ようとして狂気のようにもがいているさまはほんとうに物すごいようであった。
子猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「面白い言葉ね。札つきなら、かえって安全でいいじゃないの。鈴を首にさげている子猫こねこみたいで可愛らしいくらい。札のついていない不良が、こわいんです」
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その娘は彼と同じ十六歳で、まだ子猫こねこのように名も知られない者だったが、彼はそれに恋したのだった。彼はいつもその思い出をいっぱい持っていた。彼はよく叫んだ。
白粉をなすりつけた平凡なはだ、ややふくれっ気味の大きな顔だち、太った子猫こねこのような様子。
なやましげにて子猫こねこのヂヤレるはもやらでにはながめて茫然ばうぜんたりじやうさま今日けふもお不快こゝろわるう御坐ございますか左樣さうけれどうも此處こゝがとしてするむねうちにはなにがありやおもおもひをられじとかことば
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それでも時々隣の離れのひさしの上に母子おやこの姿を見かける事はあった。子猫こねこは見るたびごとに大きくなっているようであった。
ねずみと猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
絶対に自分の優越を信じているような子猫こねこは、時々わき見などしながらちょいちょい手を出してからかってみるのである。
ねずみと猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのうちにまたいつとなく三毛の生活は以前のように平静になったが、その時にはもう今までの子猫こねこではなくて立派に一人前の「母」になっていた。
子猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
玉をつれて来て子猫こねこの群れへ入れると、赤と次郎はひどくおびえて背を丸く立てて固くしゃちこばったが、太郎とおさるはじきに慣れて平気でいた。
子猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
小さな子供らはこの子猫こねこを飼っておきたいと望んでいたが、私はいいかげんにして逃がしてやるようにした。
ねずみと猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その後妻が近所で捨てられていた子猫こねこを拾って来た。大部分まっ黒でそれに少しの白を交えた雌猫であった。額から鼻へかけての対称的な白ぶちが彼女の容貌ようぼうに一種のチャームを与えていた。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)