姓名なまえ)” の例文
大「いや/\腹を切る血判ではない、爪の間をちょいと切って、血がにじんだのを手前の姓名なまえの下へすだけで、痛くもかゆくもない」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おれかい。おれは先刻さっき君も見たラ・ベル・フィユという二檣にしょう帆船の運転士だがね、姓名なまえは……聞きたければ教えてもいいが」
台所に近い蔵前には、各自の姓名なまえをかいた雑煮箸ぞうにばしの袋が、板張りに添って細い板割で造った、幾筋かの箸たての溝に、ずらりと並んではさんであった。
「貴郎の御迷惑になるような方ではございません、お姓名なまえを申しあげても、貴郎は御存じないと思いますから」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さざなみや滋賀県に佗年月わびとしつきを過すうち、聞く東京に倉瀬とて、弱きを助くる探偵ありと、雲間に高きお姓名なまえの、かり便たよりに聞ゆるにぞ、さらばたすけを乞い申して、下枝等を救わむと
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし無造作には宣ったけれども、その北条美作という名は、恐ろしい姓名なまえだと思われる。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
証文を認めまする時に必ず印形いんぎょうと云う物を用いまする事になって居りまして、柘植つげ或は金銀等へ自分の姓名を彫付け、是を肉にて姓名なまえの下へ捺しますけれども、時といたして印形を用いず
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そうそう、わたしも左様そうおもったの。同じ姓名なまえ兵卒へいたいが二人あって、そして犯人はうちの倅じゃない……」
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
老「いや貴方が何もわしに謝る訳はないが、ちょっとお姓名なまえだけを承わって置きましょうか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ところで貴郎のお姓名なまえは?」
郷介法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「お難有ありがとうござります、旦那さま。どうぞ御姓名なまえを伺わせて下さい、貴方さまの御幸福おしあわせをおいのりするために」
幻想 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
老「ムヽー貴方は何と云うお姓名なまえだ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お姓名なまえは?」
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女が自分の職務しごとにも興味をもっていてくれるらしいので、同僚の姓名なまえを教えたり、やがて給料のあがる話などもした。ときどき新聞を読んでくれることもあった。
フェリシテ (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
係りの人は、赤ん坊の姓名なまえ年齢としを記入してから、装飾も何もない殺風景なへやへ彼女をつれて行った。
小さきもの (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
おれは、何処ぞ巴里パリから懸隔かけはなれた田舎に隠れて暮そう。世間はきにおれの姓名なまえすらも忘れるだろう。おれはすっかり別人になって、新たに百姓になりきって生活しよう。
ピストルの蠱惑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
但し関係者の姓名なまえは秘しておきますから、皆さんが墓場をお探しになっても無駄ですよ。
麻酔剤 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
何か、小さな花束一つでもいいから買って行きたいと思った——墓地の片隅に、姓名なまえの一字だも記されてないのっぺらぼうな土饅頭どまんじゅうの下によこたわっている、あの哀れな男のために。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「まったく変ね、同じ聯隊に同じ姓名なまえ兵卒へいたいが二人いるなんて」
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
私は門番に出鱈目な姓名なまえをいって、二階へ上って行きました。
無駄骨 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「そんな姓名なまえがあるものか」