妻妾さいしょう)” の例文
高師直こうのもろなおに取っては臣下の妻妾さいしょうは皆自己の妻妾であったから、師直の家来達は、御主人も好いけれど女房の召上げは困ると云ったというが
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
またそうにもならず京のどこかへ隠されて妻妾さいしょうの一人として待遇されることができてくれば二条の院の女王にょおうからどんなに不快に思われることであろう。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
匈奴きょうどの風習によれば、父が死ぬと、長子たる者が、亡父の妻妾さいしょうのすべてをそのまま引きついでおのが妻妾とするのだが、さすがに生母だけはこの中にはいらない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
妻妾さいしょう、家に群居して家内よく熟和するものは、古今いまだその例を聞かず。妾といえども人類の子なり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
家内にせんには、ちと、ま心たらわず、愛人とせんには縹緻きりょうわるく、妻妾さいしょうとなさんとすれば、もの腰粗雑にして鴉声あせいなり。ああ、不足なり。不足なり。月よ。汝、天地の美人よ。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
愚僧は右の如くわずか一、二年の間に妻妾さいしょう両人共うしなひ申候に付き、またもや妾を囲ひたきものと心には思ひをり候ものゝ、早や分別盛ふんべつざかりの年輩に相なり候ては、何となく檀家を始め人のうわさも気にかゝり候て
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「身分違いの女子を寵愛ちょうあいして、妻妾さいしょうの位に置くものがあるとやら」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かくて佐助は晩年に及び嗣子しし妻妾さいしょうもなく門弟達に看護されつつ明治四十年十月十四日光誉春琴恵照禅定尼の祥月命日しょうつきめいにちに八十三歳と云う高齢こうれいで死んだ察する所二十一年も孤独で生きていた間に在りし日の春琴とは全く違った春琴を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
妻妾さいしょうのともにほゝ笑む菊を
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そんな田舎武士いなかざむらいの心にも、好色的な風流気があって、美人を多く妻妾さいしょうとして集めたい望みを持っているのである。少弐家の姫君のことを大夫の監は聞きつけて
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
古今、支那・日本の風俗を見るに、一男子にて数多あまたの婦人を妻妾さいしょうにし、婦人を取扱うこと下婢かひの如く、また罪人の如くして、かつてこれを恥ずる色なし。浅ましきことならずや。
中津留別の書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おおぜいの妻妾さいしょうの中ですぐれて愛される人は、見ない人までもが尊敬を寄せるものだし、自分でも始終緊張していることができて、若々しい血はなくならないであろうし
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏の幾人もある妻妾さいしょうの中の最愛の夫人で女王があって、世間から敬意を寄せられていることも並み並みでない人が娘であることは、その幸福が自家へわけられぬものにもせよ
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
お寂しくてならぬ時にだけは明石夫人のその場合のような簡単な訪問を夫人たちの所へあそばされる院でおありになった。妻妾さいしょうと夜を共にあそばすようなことはどこでもないのである。
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
幾人かの妻妾さいしょうの中でも最も尊貴で、好配偶者たるべき人はすでに尼になっておいでになるではないかとお思いになると、今もなお誘惑にたやすく負けておしまいになった宮がお恨めしかった。
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
左大臣は何人かの妻妾さいしょうから生まれた子供を幾人も持っていた。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)