妖女ようじょ)” の例文
表情の自由な、如何いかにも生き生きとした妖女ようじょの魅力に気圧けおされて、技巧を尽した化粧も着附けも、醜く浅ましい化物のような気がした。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それがサンドリヨンには、うるさいどころではありませんでしたから、ついうかうか、妖女ようじょにいましめられていたことも忘れていました。
こういって、妖女ようじょはエリーザの手をイラクサでさわりました。それはもえる火のようにあつかったので、エリーザはびくりとして目がさめました。
お前さんたち一家いっかのものを守ってあげている妖女ようじょなのだけれど、この五、六年のあいだというものは、わるいもののために、魔法まほうでしばられていて
ジャックと豆の木 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
毒のはなのような妖女ようじょの手が動いて、黄昏の空気がキラリとひかったのは、彼女のかざした薄刃のナイフだったであろう。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妖女ようじょ孫悟空そんごくうを主人公とした夢幻的で物凄じいウイヤド紙芝居が出来たなら、一度見たいものである。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「玉虫色の小さな馬に乗って、猩々緋しょうじょうひのようなものの着物を着て、金の瓔珞ようらくをいただいた」女が空中から襲って来て「妖女ようじょはその馬の前足をあげて被害の馬の口に当ててあと足を ...
怪異考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あれほど人をだます花はない。余は深山椿みやまつばきを見るたびにいつでも妖女ようじょの姿を連想する。黒い眼で人を釣り寄せて、しらぬ間に、嫣然えんぜんたる毒を血管に吹く。あざむかれたとさとった頃はすでに遅い。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぱっちりと妖女ようじょがまなこをあけて、夢からさめでもしたかのごとく、きょときょとあたりを見まわしていたようでしたが、そこに右門主従のいたのを見ると、ぎょッとしたように起き上がりながら
妖女ようじょ落胤らくいん
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから妖女ようじょは、手に持ったつえで、こつ、こつ、こつと、三どたたくと、かぼちゃは、みるみる、金ぬりの、りっぱな馬車にかわりました。
きょうだいたちは、手をとりあって、さえた月の光の中で、静かなみずうみのふちにでて、おどりをおどります。三人とも妖女ようじょではなくて、にんげんでした。
惨殺ざんさつ、麻酔、魔薬、妖女ようじょ、宗教———種々雑多の傀儡かいらいが、香の煙に溶け込んで、朦朧もうろうと立ちめる中に、二畳ばかりの緋毛氈ひもうせんを敷き、どんよりとした蛮人のようなひとみえて、寝ころんだまま
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夢中のその幻に左右されながら、よく人をあやめたり、盗みを働いたりする場合があるので、右門は早くも妖女ようじょの言動動作から夢遊病者だなということを看破しましたものでしたから、ここに問題は
これだけのことが、みんな、ほんのばたきひとつするまに、できあがってしまいました。妖女ようじょというものは、まったくしごとの早いものですね。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
それは心配の妖女ようじょと、幸福の女神の召使でした。ふたりは死人の上にのぞきこみました。
妖女ようじょはあらためて、サンドリヨンにむかって、なにはおいても、夜なか十二時すぎまで、ぶとう会にいてはならないと、きびしくいいわたしました。
「おにいさまたちは、もとの姿にもどれるだろうよ。」と、その妖女ようじょはいいました。
それで、妖女ようじょはさっそくそこを出て、りゅうにひかせた火の車に乗ると、ちょうど一時間で、王様のお城につきました。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
すると、うつくしいかがやくような妖女ようじょがひとり、おむかえにでて来ました。
妖女ようじょがおもしろいゆめを、それからそれと見どおしに見せていてくれたのですから、いくら話しても話しても、話のたねがつきるということがないのです。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
森のなかをあるきながらみまわすと、月あかりが木立をすけてちらちらしているなかに、かわいらしい妖女ようじょたちのおもしろそうにあそんでいるのが目にはいりました。妖女たちはへいきでいました。
ほんとうは、このふたりは妖女ようじょだったのです。
こういうと心配の妖女ようじょ